CIN3、AIS、およびⅠ~Ⅱ期の子宮頸がんに対する治療法です。がんの広がりに応じて、ⅢC期でも手術を検討することがあります。がんの広がりにより、子宮頸部の一部または子宮全部を切除します。卵巣と卵管は、年齢や病状に合わせて切除するかどうかを決めます。切り取った組織を顕微鏡で詳しく調べてがんの広がりを診断し、手術後の治療方針を決めます。
前がん病変に対する単純子宮全摘出術では、腹腔鏡下手術も広く行われています。子宮頸がんに対する腹腔鏡下手術も一部保険適用になっていますが、実施可能な病院は限られています。
1)手術の種類
(1)円錐切除術
子宮頸部の一部を円錐状に切除し(図5)、病理組織学的に病変の広がりを詳しく調べます。CIN3に対しては、病変を完全に取り切る治療として行います。子宮の多くの部分を残すことができますが、その後の妊娠や出産に影響が出る場合もあります。

(2)単純子宮全摘出術
子宮頸部の周りの組織は取らずに、子宮だけを切除します(図6)。円錐切除を行い、切除した面にCIN3があった場合や、診断がAISまたはごく早期のがん(ⅠA1期)だった場合に行います。おなかを切り開いて切除する開腹手術、おなかを切らずに腟から切除する腟式手術、腹腔鏡下手術のいずれかで行います。子宮を摘出するため、妊娠することはできなくなりますが、性交渉は可能です。

(3)準広汎子宮全摘出術
がんを取り残さないように、単純子宮全摘出術よりも少し広めに子宮を切除する方法です(図7)。子宮と一緒に、子宮を支えている基靱帯などの子宮頸部の周りの組織の一部と、腟の一部を切除します。膀胱の神経の大部分を温存することができるため、尿が出にくくなるといった術後の排尿のトラブルはほとんど起こりません。子宮を摘出するため、妊娠することはできなくなりますが、性交渉は可能です。

(4)広汎子宮全摘出術
がんを完全に取り切るために、準広汎子宮全摘出術よりもさらに子宮を広く切除する方法です(図8)。子宮と一緒に、子宮の周りの組織や腟を大きく切除します。また、骨盤内のリンパ節も一緒に切除するリンパ節郭清を行います。がんを完全に取り切ることができる可能性は高くなりますが、リンパ浮腫、排尿のトラブル、性生活への影響などが起こることもあります。卵巣を切除するかどうかは、年齢や組織型、病期なども考慮して決めます。

(5)広汎子宮頸部摘出術
妊孕性を温存する(妊娠するための力を保つ)ために、子宮体部と卵巣を残し、それ以外は広汎子宮全摘出術と同じ範囲を切除します(図9)。通常であれば広汎子宮全摘出術が必要な病期の場合で、将来子どもをもつことを望んでいて、妊娠可能な年齢のときに検討します。主な手術方法として、おなかを切り開いて切除する開腹手術と、おなかを切らずに腟から切除する腟式手術があります。本来取るべき子宮体部と卵巣を残すため、ⅠA2期またはⅠB1期で明らかなリンパ節転移がないなどの一定の基準を満たしている必要があります。

2)手術後の合併症など
子宮頸がんの手術の合併症には、腸閉塞などがあります。
腸閉塞は、腸の炎症による部分的な癒着(本来はくっついていないところがくっついてしまうこと)などによって、腸管の通りが悪くなる状態のことをいいます。便やガスが出なくなり、おなかの痛みや吐き気、嘔吐などの症状が出ます。多くの場合、食事や水分を取らずに点滴をしたり、胃や腸に鼻からチューブを入れて胃液や腸液を出したりすることなどで回復しますが、手術が必要になることもあります。
このほか、手術後に起こりうる日常生活への影響としては、排尿のトラブル、便秘があります。また、リンパ節を切除した場合にはリンパ浮腫(足や下腹部のむくみ)、卵巣を切除した場合には卵巣欠落症状(更年期障害と同様の症状)などが起きることもあります。詳しくは、関連情報「子宮頸がん 療養 2.日常生活を送るうえで 1)手術後や放射線治療後の日常生活」をご覧ください。