1.検査の目的
PET(Positron Emission Tomography、陽電子放出断層撮影)検査は、治療前にがんの有無や広がり・他の臓器への転移がないかを調べる、治療の効果を判定する、治療後に再発がないか確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査です。
2.検査の方法
PET検査は、FDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を使って行います。
※FDG以外の放射性物質を使ったPET検査もありますが、研究段階です。通常の診療ではFDGを使用したPET検査がほとんどですので、FDG-PET検査のことをPET検査ということが一般的です。
PET検査では、静脈からFDGを注射し、細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を、放射性フッ素を目印に画像にします。がん細胞は、通常の細胞より多くのブドウ糖を取り込む性質があるため、たくさんのブドウ糖が集まるところには、がんがある可能性が高いと考えられます。PET検査はCT検査やMRI検査と組み合わせて行うこともあります。PET-CT検査は、PET検査とCT検査の画像を重ね合わせることで、がんの有無、位置や広がりを高い精度で診断することができます。
3.検査の実際
PET検査では、検査の当日は、検査の5~6時間前から糖分を含む飲食物の摂取はできません。検査の直前に排尿をすませます。FDGを注射して1時間前後、ベッドなどで安静にしてFDGが細胞に取り込まれるのを待ちます。撮影時には、機器の寝台の上にあおむけになります。撮影時間は30分程度です。撮影した画像でがんが確認しにくい場合には、さらに時間を置いて撮影することがあります。検査後は、体に取り込んだFDGを体外に出すために、水分を多めにとって排尿を促します。
詳しくは、実際に検査を受ける病院で確認しましょう。
4.検査の特徴
PET検査には、一度にほぼ全身の撮影ができるという特徴があります。また、CT検査やMRI検査と異なり、がんの状態(がん細胞が活発に活動しているかなど)も調べることができます。
一方で、脳や心臓、消化管、肝臓、咽頭の粘膜、泌尿器などの臓器や、炎症を起こしている組織など、がんと関係なくブドウ糖が集まりやすい部位では、PET検査による診断が難しいことがあります。また、糖尿病などで高血糖の状態では正確な結果が出ないことがあります。糖尿病の人は検査前に医師に伝えましょう。
PET検査は、放射性物質を使って行います。検査による被ばくの影響を過度に心配する必要はありませんが、胎児は放射線の影響を受けやすいため、妊娠している人、妊娠している可能性がある人は、必ず医師に伝えましょう。
5.PET検査を行う主ながん
PET検査は、さまざまな部位のがんで行うことがあり、特に頭頸部がんや、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、肺がん、乳がん、大腸がん、膵臓がんなどで有用とされています。
PET検査は、他の検査、画像診断による病期診断や転移・再発の診断が確定できない場合に保険診療で受けることができます。
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6.Q&A
Q1PET検査による被ばくが心配です。体への影響はありませんか?
A1通常、人の健康に影響することが確認されている放射線の1回量は100mSv以上です。一方、1回のPET検査でFDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)から受ける放射線量は約3.5mSvです。FDGから出る放射線は時間とともに弱くなり、多くは尿と一緒に体の外に出されます。CT検査を組み合わせる場合は、CTによる放射線量が加わりますが、被ばくによってダメージを受けた細胞のほとんどは、そのたびに修復されて正常な細胞に戻ります。
※Svとは、放射線が人間にあたったときにどれだけ健康に影響があるかを評価するために使う単位です。
このことから、検査による被ばくの影響を過度に心配する必要はありません。また、検査を行うのは、このような被ばくの影響よりも、がんの広がりや治療の効果を確認するなど、現在の体の状態を調べるメリットの方が大きい場合だけです。
不安がある場合は気になる点を医師に伝え、説明を受けましょう。なお、胎児は放射線の影響を受けやすいため、妊娠している人、妊娠している可能性がある人は、必ず医師に伝えてください。
放射線検査による被ばくと健康影響、放射線検査を受ける意義などについて解説されています。Q2PETによるがん検診は有効ですか?
A2がん検診は、無症状のうちにがんを早期発見・早期治療し、がんで亡くなることを防ぐことを目的として行うもので、すでに症状がある場合に行うがんの検査とは異なります。PETによるがん検診によって、がんがどれくらいの精度で発見され、がんで亡くなる人がどれくらい減少するのかなどは、まだ十分なデータがありません。現在国内で実施されているPET検診は全て、国が推奨するがん検診ではなく、人間ドックなどで行われる任意の検診です。
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