プロフィール
妻と息子2人(小学6年生と4年生)の4人暮らし。出版社に勤務。
20歳代から潰瘍性(かいようせい)大腸炎を患っていたが、2019年の年末(当時41歳)、通勤中に貧血で倒れて検査を受けたところ大腸がんが発覚。治療方針を決定する際にストーマ造設の告知を受ける。腹腔鏡手術を受けて退院するも3日後に腸閉塞を起こして再入院。つらい絶食治療を経験する。体力の回復をみて6カ月間の抗がん剤治療をスタート。2020年12月に治療が終了し、現在(2023年取材時点)は3カ月に1回のペースで検査を受けながら経過観察中。
2019年末、大腸がんが見つかり、ストーマ(人工肛門)の造設を行ったS. N.さん。ストーマをつくるときの病院でのやりとりや入院中のハプニング、そして具体的なストーマケアの手順について語ってもらいました。
ズボンに合わせてストーマ位置を決定
―― ストーマの造設手術をするにあたり、病院(ストーマ外来)での準備はどのように行いましたか?
まずは看護師さんから「ストーマがどのようなものか」という話からしていただき、ストーマをつくる位置(S. N.さんの場合は小腸でストーマをつくっているため、ここでは小腸を出す位置のこと)とストーマ装具*1を決めていきました。手術中にはもう穴を開けてしまうので、手術の前に決めておく必要がありました。ストーマの位置はすぐ決まり、ペンでいろいろ線を引いたり書いたりしたことを記憶しています。
ストーマの位置を決めるために先生と看護師さんから「(ふだん)どういうズボンをはきますか?」と質問されました。
ズボンは股上が浅いものか、深いものかどちらかと聞かれて「まぁ割と浅い方かもしれないです」と答えましたね。例えば高齢の方のなかには股上がとても深いズボンをはく方もいるでしょうから、おそらくそういうこともあって聞かれたんだと思います。
あとは左右のどちら側にするかも決めました。詳しくは聞きませんでしたが、(体の)真ん中だとおそらく具合が悪いのではないかと。またストーマ袋のサイズ・長さも、ズボンの位置に影響するのではないかと思います。
ストーマにするとストーマ袋に便をためることになるのですが、何日か経つとどうしても少し外にはみ出すことがあります。便はアルカリ性で皮膚は酸性なので、皮膚が荒れて少しずつ黒ずんだり、かゆくなってきたりとトラブルが起こることもあります。
貼る部分の皮膚がただれてきちゃうと、もうどうしようもない。装具をつけるときに血だらけになってしまったりするので大変なんですよね。ストーマは一生ものですし、そうした問題が発生しないようにと、先生や看護師さんは細かく確認しながら対応してくださったのだと思います。
*1 ストーマからの排せつ物をためるための専用の装具のこと。パーツが分かれているタイプの場合、袋の方は「ストーマ袋」と呼びます。
はじめて触れるストーマ装具。意外な軽さに驚き
―― ストーマ装具はどうやって選んだのでしょう?
装具については、私はアトピーがちで皮膚が弱いということもあり、肌に合う・合わないかに気をつかって慎重に決めました。
粘着部分は各メーカー似たようなものかもしれないのですが、実際につけてみて体に合うかどうかを確認しました。私が選んだ装具は、ツーピース(面板とストーマ袋が別々になっているタイプ)です。
私の場合はちょうどおへそにかぶるようなところにつけるので、いろいろなメーカーのものを試してみて、菱形のものを選びました。何回も先生や看護師さんと一緒に話し合いましたね。
今、ちょうど交換用の装具を持っているので、ここでお見せしますね。トラブルがあったときのために、いつも持ち歩いているんです。
(常備されている使用前のストーマ装具やスキンケア用品を見せていただきました)
ストーマ袋を装着するため、“面板”をペタッと皮膚に貼るのですが、ここは特殊な素材になっています。また交換するときは、特殊な液体[リムーバー/剥離(はくり)剤]を使うことで、ベリベリとはがすことができます。はがすときは面板の粘着物が残ってしまうと次が貼りづらくなるので、粘着物を落としきって、せっけんできれいに洗ってから新しい面板を貼る必要があります。
また細かい話ですが、装具をつけるときはまず体毛をそらなくてはいけません。毛が残っていると粘着性が弱くなるし、痛くはないけどかゆくなってしまうんです。
ストーマ外来では、それらの装具の扱い方と交換時の手順について丁寧に教えていただきました。これは術後にも何回も教わりました。簡単そうなんですけど、なかなか覚えられなかったですね。
―― 一般の人は見慣れない装具だと思います。はじめて触れたときの印象はどうでしたか?
意外と軽いんだなと思いましたね。もっとゴテゴテしたものをつけるのかなと思っていたので。友達と話していても、機械がつくような印象がある人がわりといるようです。
“造設”という言葉で、重たいものと感じてしまうのではないかと思います。でもストーマ袋は薄くて軽くて、さらに私が使っているものは透明です。
ストーマ袋の中が見えないように花柄のカバーを買ったこともありましたが、今はまったくつけていません。そんなにストーマ袋を(服の)外に出すことはないので、もういいかなと思って。実際に外から便が見えてしまうのは汚いのですが、自分としては、袋の中がどんな状態かわかっていいですしね。
入院中のハプニング――キャップの開けっ放しによるもれ
―― ストーマをつくって最初に感じたことは?
はじめは違和感や重さがありました。便がたまるので少し引っ張られる感じや、かゆみもありましたね。自分でストーマケアを始めたのは、体から管*2がだいぶ外れてきてからです。術後すぐは管がたくさんついた状態だったので、自分でできるようになるまでは看護師さんに対応してもらいました。パッと便を出して、新しい装具に貼り替えてもらいましたね。
はじめてのトラブルは入院中のもれでした。私の使っている装具は、ストーマ袋の下にあるキャップが閉まっていない状態で届けられるんです。そこでキャップを開けっ放しの状態で装着し、もらしてしまいました。寝ているときに「なんか冷たいな…」って思ったら、「あれ、漏れてる!」って。夜中に大騒ぎしましたね(笑)。
パジャマだけだったらいいのですが、ベッドについてしまって大変でした。看護師さんが夜中3時に大きいマットレスを運んで新しいものに換えてくれて…。申し訳ないなぁと思いましたね。だから病院内ではベッドを絶対汚してはいけないと、そのあとは赤ちゃん用のビニール製のシートを買ってきてもらって、それを敷いて寝ていました。
布団にもなるべくつかないようにと気をつけましたね。この最初の失敗は大きな学びでした。今では、ちゃんと装具が届いたらすぐにキャップを閉めるようにしています(笑)。
ただ、一度もれを経験すると常に不安になるものです。入院中、便はついていないか、といつも気になっていましたね。
*2 手術の後につけられている点滴用や麻酔用のチューブ、体内にたまる血液や体液の排出用ドレーンなどを指します。
―― 便の処理のほうは、最初からうまくいきましたか?
最初は「わー、すごく汚いな」と思いながら捨てていました。まわりにつかないように、絶対に垂れないように、と神経質になっていましたね。今でこそだいぶ慣れましたが、ポトッと垂れてズボンについたら嫌じゃないですか(笑)。
先生は「何となく汚いイメージがあるけど、実際はそんな汚いものじゃないですよ」と何回も話してくれました。徐々にまぁそうかなと、あまり不潔さというか、そういう印象はなくなっていきましたね。
看護師さんの教えは今も律儀に守っている
―― 装具の交換についてはどんなふうに教わったのですか?
装具の交換は自分ひとりでできるようになるまで、装具をはがしたあとにきれいにケアができているかどうか、看護師さんに細かくチェックを受けました。
はがしたときは粘着物がダマになって残りがちなので、リムーバーを使って丁寧にはがします。さらに剥離剤をひたしたガーゼで拭き取って、残った粘着物をすべて取り除きます。(おなかから出ている)小腸(ストーマ)の、私からはうまく見ることができない箇所も、ガーゼを下から当てて拭き取るようにします。
粘着物がきれいに取れたら、次はせっけんできれいに洗います。看護師さんには、皮膚のケアもできる泡タイプのせっけんをおすすめしてもらいました。しっかり洗った後、最後にベビーパウダーのようなサラサラの粉を使ってケアをします。
ここまでの流れや技術をわりとしっかり指導されたんですけど、とても細かいですよね(笑)。でも、今でも律儀に守って行っています。おそらくいい加減にやる人もいて、看護師さんはそういう人がいることを知っているから、口酸っぱく言ってくださったんだろうなと思います。
―― ストーマをつくった後で、想像と違ったなと思ったことはありますか?
ストーマをつくった位置については、先生に1回ちらっと相談したことはあります。そのときにはくズボン次第ではあるものの、ズボンのヘリにちょうど小腸(ストーマ)が当たってしまうことがあるんです。どうしようもないな〜って感じではあるんですが。先生も「それはどうしようもないな。もうここを開けちゃったし」という回答でした。
選択肢はほかになかったと思っていますし、今は全然気にしていないんですけど…、難しいですよね。
もう少し下につくっていたら、ストーマ袋がだらんと脚の方まできてしまって、それはそれで不便だったろうなと思います。逆にもう少し上につくるのも上過ぎるかなと…。おそらく私の小腸(ストーマ)の位置に合わせた上限があったのだろうと思いますしね。
手術前に位置を決めるときは確か、よくはいているズボンを持っていったんです。そうしてちゃんと決めたものであっても、どうしても気になるところは出てきてしまいます。ただ命拾いしたことから考えると、本当に小さいことです。
ほかに気になることはとくに何もなくて、退院してからは結局、ストーマ外来を利用するほどひどい状態になったことはありません。装具のメーカーを変えようかと考え直したこともないですし、比較的トラブルは少ないほうなのではないかと思います。
真摯にストーマ生活に向き合ってきたS. N.さん。だんだん慣れてきて、自分なりのコツや工夫ができるように。続きは【日常生活編】へ。


