プロフィール
夫・息子(17歳)・娘(14歳)と4人暮らし。がん発覚時は専業主婦、現在(2024年取材時点)は百貨店にあるレストランの厨房で平日4〜5日・1日あたり5時間程度のパート勤務。
2021年3月に受けたCT検査がきっかけでステージ1の肺がんと診断され、同年5月に入院し、胸腔鏡下手術で左肺の一部を切除した。手術後は肺炎や体重減少を経験し、現在は半年に一度のCT検査を受けながら経過観察を続けている。喫煙歴なし。
CT検査をきっかけにステージ1の肺がんが見つかったというY. K.さん。胸腔鏡(きょうくうきょう)による手術で左側の肺の一部を切除しました。今回は、食生活をはじめ退院後の生活で苦労したことや、がん発覚から3年たった今の気持ちについて、詳しく語ってもらいました。
手術後の生活は家族みんなに支えられた
―― 肺がんの手術後6日で退院したということでしたが、退院後の生活で不自由に感じたことはありましたか?
退院してから肺炎になってしまい、治るまでに1カ月ほどかかりました。息切れがして、呼吸がつらくて、少ししか歩けませんでしたね。
買い物をしようにも、車を運転できるようになるまで2カ月ほどかかりましたし、かろうじて運転ができるようになってからも、外に出て歩くのがすごく大変で。スーパーに入っても半分くらいしか歩くことができませんでした。息子に付き添ってもらって、カートを押してもらったり荷物を運んでもらったりしましたが、スーパーの中を1周歩くことができるようになるまで4カ月かかってしまいました。階段を上れるようになるまでには半年くらいかかり、1年ほどはエレベーターを使っていましたね。
自宅の階段もできるだけ使わないように過ごして、食事は家族に寝室のある2階まで運んでもらっていました。お風呂場にはがんばって階段を下りて行ったんですけど、腕が(痛くて)上がらないから立った状態でドライヤーをかけられなくて…。そのときはイスに座って、娘に髪の毛を乾かしてもらっていましたね。
ほかの大体の家事は夫がやってくれました。子どもたちの学校の行事やPTAの集まりにも積極的に行ってくれたので助かりました。
肺炎のあと、食事のペースが変わり、1年で20kg痩せた
―― 活動量が減り、体に変化はありましたか?
手術をする前の体重は70kgほどだったのですが、手術後に肺炎にかかって10kg減り、その後1年ほどでさらに10kg減りました。今は増減がなくて、50kg台をキープしています。
1年かけて10kg痩せてしまったのは、食べられなくなったことが大きいですね。とにかく量が減りました。退院してすぐは、家族が食べているものを少しずつもらって食べていたのですが、食べると咳(せ)き込んでしまって。なぜだかわからないんですけど、食べるとむせるというかのどがムズムズして、一口食べるとゲホゲホと咳をしてしまって。食事の時間はかかるし、量もそんなに入らない状態でしたね。
当時は主治医の先生にも相談してみたんですけど「あぁ、そうなんだね」という反応で(笑)。ゆっくり食べたり、急いで飲み込まないようにしたり、自分なりに工夫しました。でも、まわりの人が嫌がるかなぁ…と思って、あまり外では食べることができなかったです。(コロナ禍だったこともあり)咳をすると結構みんなに「大丈夫か!?」と思われてしまうので。このような咳は2年近く続いて、今でも食事中に出ることがありますね。
―― 食事の内容にも変化があったのですか?
普通のご飯やおかずはかめるので、特別柔らかいものに変えたりすることはありませんでした。ただ、食べ過ぎると次の食事に響いてしまうんです。たくさん食べてしまった後は1日何も食べないほうが体調がよかったりして。今もラーメン屋さんに行っても半分食べられないくらいです。
がんになる前は甘いものや揚げ物などをよく食べていたのですが、そんなに食べなくなりました。それは今も変わりません。おなかは空くけれど、食欲がないんです。「これが食べたい」という気持ちがなくなってしまって…。おなかが空いたらおにぎりを1個食べるんですけど、それで十分になっちゃう。
現在は1日2食で、朝食べると仕事ができなくなってしまうので朝食は食べていません。仕事から帰ってきてからおにぎりを1個食べて、夕食は家族と普通に食べています。でもその量は少ないです。
今でも検査を受ける前は不安になる
―― がんが見つかってから3年、今の状況について教えてください。
主治医の先生からは「とりあえず5年は欠かさずCTを撮って、そのあと(何か見つかったとき)のことはそのときに考えましょう」と言われています。ただ手術をして3カ月後にCTを撮ったときに、右の肺に影があると言われてしまって。「これはもしかして再発か?」とすごくびっくりしたんですけど、1年後にもう一度撮ったら映らなかったんです。先生の話では「こういうこともあります」ということでしたが…。
現在は半年に1回検査を受けていますが、何かの拍子にまた影が映るんじゃないか、本当に再発するのかもしれない、と今でも怖いです。検査の1週間前あたりになると「来週検査だな、何かあったらどうしよう」という気持ちになります。
―― がんになってから、自分のなかで大きな変化はありましたか?
手術の翌年の2022年から、放送大学に入学して心理学の勉強をしています。これはかねてよりやりたいと思っていたのですが、先延ばしにしていたんです。でもがんになって、今のうちにやりたいことやっておかないと後々後悔するなって思ったんです。自分が死ぬときになって「あれをやっておけばよかった」とか「こういうこともしたかった」とか、そういうものを残しておきたくないなと。こういうことを始めるきっかけは病気になった今なんじゃないかと思いました。
がんになって、家族のためにがんばりたいと思えるように気持ちが変化
―― ほかにも考え方が変わったことがあれば教えてください。
あとは、がんになってからは家族の存在をすごく感じて、家事をがんばるようになりましたね。これまでは家族に頼りっきりだったのですが、家族のために美味しい料理を作りたいとか、自分ができることはやろうとか、そういうふうに思うようになりました。がんの手術後、家族のサポートがあったことも気持ちの変化に影響していると思います。私が楽しく一生懸命生きているところを家族に見せたいなと思って行動するようになりました。
がんになったときは、日々の生活に閉塞感を感じていたというか、夫や子どもとの関係がうまくいっていなかったタイミングだったんです。私は何のためにいるんだろうと、マイナスに考えてばかりいました。それががんになったあとは、そんなことを考えてもしょうがない、自分のできることをしよう、と。病気をきっかけに、生き方を変えなきゃと思うようになって、そして今、いい方向に変わっている感じがしています。
がんの発覚から手術までの歩み編:「私が経験した肺がんの告知と手術 〜子どもへどう伝えるべきか悩んだ〜」を読む


