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体験談
大腸がん

「外出するのが不安」。排便障害に悩んだ日々【永久的ストーマ(人工肛門)をつくるまでとその後の生活・前編】

#排便#周囲の理解#日常生活
公開日2024.05.21
お名前
K. S.さん
性別
女性
罹患時の年齢
40代
がん種
大腸がん

プロフィール
神奈川県在住で、夫と息子2人(大学3年生と高校3年生)の4人暮らし。元新聞記者。現在は会社員としてイベントやセミナーの運営全般を担当し、企画・広報・司会まで幅広く携わる。
2018年、会社の健康診断がきっかけで精密検査を行い、46歳でステージ1の直腸がんが発覚。手術、一時的ストーマの造設、抗がん剤治療を経験する。罹患後1年たたない2019年、肺への転移が発覚してステージ4に。以降、3度の転移性肺がんの手術を行い、2023年3月より経過観察中。2021年に直腸がん局所再発となった時に永久的ストーマを造設した。


健康診断がきっかけで直腸がんが見つかり、手術、抗がん剤治療、肺転移、永久的ストーマ(人工肛門)の造設と、さまざまな経験をしたK. S.さん。今回は、永久的ストーマ造設のきっかけになった排便障害について、当時の気持ちとともに詳しく語ってもらいました。


いつくるかわからない排便に備えないといけない

―― 2021年1月に永久的ストーマを造設されたとのことですが、それまで悩まされていた排便障害とは、どのようなものだったのでしょう?

個人差が大きいようなので「私の場合は」という言い方しかできないのですが…。

私は2018年に直腸がんが見つかり、直腸をすべて摘出しています。直腸は便を一時的にためておく臓器ですが、それがまるっとないものですから、便をためておくことができません。でも便は作られるので、ためる間もなく出てきてしまうわけです。なので、いつ便が出るかわからない、便意がなくなるっていう感じなんですね。

例えば、排便しようとトイレに10回行っても、便がためられないからちょっとずつしか出ないんです。普通の人は直腸に10回分(などまとまった回数)の便がたまって、ある程度の量になったら便意が感覚的にきて、バナナのようにまとまって出ると思うんですよね。でも私の場合はそれがない。1回ずつ、その都度したくなって、行ってもちょっとしか出ないんです。

だから、直腸を切除した人はいつも、いつくるかわからない排便に備えていなければなりません。これは精神的にもやられますし、あの頃はもう…、最悪でしたね。私は結果的に局所再発をしたため永久的ストーマを造設することになったのですが、それがなくても自分から「永久的ストーマにしてください」って言おうと決断していました。

それくらい排便障害はきついです。そう思っている人はたくさんいるはずで、でも永久的ストーマになると障害者手帳を持つことになりますし、そのあたりに抵抗感がある人もいると思います。また、一生袋(排せつ物をためておくストーマ袋)をつけているということへの抵抗感がある人も、当然多いと思います。

でも私はそれらと比較しても排便障害のほうがきつかったので、今は(永久的)ストーマにして大正解だったと思っています。

1日に50回トイレに行ったことも

―― いつ便が出るかわからない状態というのは、本当につらいと思います。

はい、排便障害にもいろいろ段階があって、人によっては落ち着いてきたりするようです。私もだんだん落ち着いて、でもまた悪化して…という繰り返しでした。

ひどいときは、1日に50回くらいトイレに行きましたね。1回トイレに入って1〜2時間ずっと便座に座っている、なんてこともありました。出たと思ってもまたすぐ数分後にくるし、“出そうで出ない”状態がずっと続くから、トイレの中にずっといる。「またしたくなるんだったらもうずっとトイレにいるわ。だったらタブレットで映画観るし」みたいな。トイレがないと生きていけない、という感じですね。

残便感があったり、踏ん張っても出なかったり、出たと思ってもまたドーッと(便意が)きたり…。そうなると外出もしにくいです。電車では、各駅停車で移動しても次の駅までも間に合わないんです。私は東海道線をよく利用していて、車両にトイレがついているから安心して乗ることができました。でも地下鉄の場合は1駅分も間に合わなくて、その場合はもらします。大の大人が便をもらすって、結構屈辱です。なのでそれに備えて、出かけるときはおむつパッドや尿取りパッドをつけていましたね。

―― ほかに、排便障害を抱えていた頃に気をつけていたことはありますか?

食べ物や食べる時間帯にも気をつける必要がありました。私はとんかつやラーメンを食べると便が出やすくなってしまうので、“大事な日の前日の勝負とんかつ”は食べられません。また、午後に会議がある日は、席を外したくないので朝ご飯はほとんど食べませんでした。食べないことで(便が)出ないようにする、という工夫はしていましたね。

また腸を切った人って、腸閉塞(ちょうへいそく)が危ないんです。食べ物が詰まりやすいので、排便障害とは別の観点でも食事に気をつけないといけません。たくさん食べると詰まっちゃうから、“どか食い”や“ばっかり食べ”をしないようにしています。不溶性の食物繊維が多いにんじんやきのこ、たけのこやわかめなども、食べ過ぎたら詰まっちゃう。そんなふうに、腸を切った人にはNGな食材があるんですよ。

周囲に“理解”してもらうのは難しい

―― そのような状態について、まわりにはどう伝えていましたか?

私は外出するのが嫌だという一方で、友達とランチには行きたくって。そういう場合は友達に「私しょっちゅうトイレ行くから、申し訳ないんだけど、食事中もトイレに立ったりするけどごめんね!」と、自分の状態を伝えていました。仕事で出社が必要なときも、仲間に「申し訳ないけど、会議中でも便意が突然くるから。ごめん、出るから(席を立つから)!」というふうに言っていましたね。

まわりの関係者に伝えておくことしかできなくて、それを認めてもらうしかないという感じです。理解してもらうまでは難しいと思うんですよね。「どういうことが排便障害?」「便がそんな急に出るってどういうこと?」ってなると思うんです。“普通の生活はできない”ということなのですが、経験しないとわからないことなので、説明がなかなか難しい。私も排便障害になるまで聞いたこともなくて、こんなものだとは思わなかったですしね。

―― このような排便障害を約2年2カ月経験されましたが、なかでも一番つらかったことはどんなことでしょう?

私の場合、ちょっとずつしか便が出なくて、残便感があって、常に便がそこまできているような感覚がありました。で、便が出きらない感じが気持ち悪くて、がんばって絞り出そうとしたら肛門付近もやられちゃって。ヒリヒリと痛くなってしまいました。イスにお尻をつけることができなくなって、イスの上で正座をしていましたね。ドーナツクッションを使ったりもしました。お尻が痛くて痛くて、全身の神経を全部お尻に取られた感じがして、もう大変でした。

夜も眠れなくなって、メンタルクリニックで睡眠導入薬を処方してもらいました。それでも眠れなくて「何で便のために眠れないんだよ…」という気持ちになりましたね。寝ていても、便が出そうだからトイレに行く。でもちょっとしか出なくて、またトイレに行く。お尻も痛いし寝ている場合じゃない、という感じで…本当につらかったですね。

「便で、人はこんなにも弱ってしまうのか」とも思いました。その頃はコロナ禍だったこともあり、みんながふさぎ込んでいる時期ではあったと思いますが、とても落ち込みましたね。「一生こんな痛みとつながっていかなきゃいけないのか」と。食べるのも嫌になっちゃいましたね。

ストーマで、トイレが近くになくてもいい生活になった

―― 永久的ストーマにしたことで、生活はどう変わりましたか?

とにかく、トイレを気にせず出かけられるようになりました。今では電車にも乗れるし、ドライブにも行くし、飛行機にだって何だって乗れます。ストーマって(ストーマ)袋が直腸の役目をしてくれて、便を一時的にためられるんです。もちろん便意はこないし、いつ便が出るかわからないことに変わりないのですが、袋にいったんためておける。体にいつも袋をつけているのはやっぱり嫌ではありますが…、ストーマのおかげで近くにトイレがなくても大丈夫になりました。

気兼ねなく人と約束ができて、レストランで何度もトイレに行ったりしなくてよくて、会議にも出られて…、本当に普通の状態に戻れたと思います。この間は旅行にも行きました。今(インタビュー中)もこうして落ち着いて座っていられますけど、排便障害があったら何度もトイレに行っていて、インタビューを受けること自体できていなかったと思います。

本当に、永久的ストーマにして大正解だった。そういう世界があること、伝えたいと思っていますね。


永久的ストーマによって生活に変化が。ストーマのある生活に順応するまでの出来事とポジティブな側面とは。続きは【中編】へ。

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この記事の監修者

佐藤 太郎(さとう たろう) 先生
大阪大学医学部附属病院 がんゲノム医療センター 准教授
監修者の写真

1993年弘前大学医学部卒業。内科医、米国での研究留学を経て、近畿大学腫瘍内科へ。2011年より大阪大学大学院医学系研究科に在籍。2023年4月より現職。胃がん、大腸がんなどの消化器疾患の抗がん剤治療や緩和ケア、がんゲノム医療を中心に診療を行っている。

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