がんの治療後には、自分の意志に反して尿や便がもれてしまったり、トイレに間に合わないことがあります。これらの症状は命には関わらずとも、外出が不安になったり、気分が落ち込んだりするなど患者さんの生活の質を左右することも。尿もれや便もれが起きても慌てずに対処ができるよう、ケア用品の選び方やにおい対策についてお話しします。
Q.がんの治療後には、尿もれ・便もれが起こることがあると聞きました
A.骨盤内には、排尿や排便に関わる神経や筋肉が集まっています。そのため、骨盤内の手術や放射線治療などによってそれらが損傷を受けると、尿もれや便もれが起こることがあります。
尿もれ・便もれは次のような種類に分けられます。
おなかに力がかかったとき、もれる【腹圧性の尿もれ・便もれ】
咳やくしゃみをしたり、笑う、走る、重い荷物を持ち上げたりなど、下腹部に力がかかった時に尿や便がもれる。加齢で起こる場合もあり、女性の尿もれの中で最も多いタイプ。
「したい」と感じた後、我慢ができずもれる【切迫性の尿もれ・便もれ】
尿意を感じた途端に尿がもれたり、下痢など急な便意を我慢できず便がもれたりし、トイレに間に合わない。加齢でも起こる場合がある。
便意がないため、知らずにもれる【漏出性(ろうしゅつせい)の便もれ】
肛門の機能低下や排便にかかわる神経のトラブルで便意を感じなくなることが原因で、気づかないうちに便がもれる。便もれのなかで最も多いタイプで、排便後の1〜2時間後に少量だけもれることが多い。加齢でも起こりやすい。
出し切れなかった尿がもれる【溢流性(いつりゅうせい)の尿もれ】
尿を出したいのに出し切れず、膀胱に残った尿があふれ出てもれる。前立腺肥大による排尿障害によるケース(男性のみ)が多いが、直腸や子宮の手術によって膀胱周囲の神経の働きが低下することでも起こる。
Q.おむつやパッドの選び方がわかりません
A.快適に過ごすためには、おむつやパッドを適切に選び、正しく装着することが大切です。これらはドラッグストアやインターネットなどで手軽に購入することができます。活動量や生活スタイル、尿もれや便もれの種類や量に応じて、適切なものを選びましょう。
おむつは大きくテープで留めるタイプとパンツタイプに分かれます。患者さんが自分で脱ぎ着できる場合には、パンツタイプを選びます。近年のおむつは薄く進化し、外見からは着けていることがわかりにくくなっているほか、消臭機能がついているものも多くあります。
尿とりパッドには、1回分から5〜6回分の吸収力を持つものまでさまざまな種類があります。交換できるタイミングは一人ひとり違うので、患者さんの生活スタイルに合ったものを選びます。女性の場合は生理用品で代用せずに、より吸収が速い尿もれ用のパッドを使いましょう。男性の場合は、ぴったりした下着にパッドを装着して使います。便もれのみで量が限られている場合は、コンパクトな便もれ専用パッドがおすすめです。
外出時におむつやパッドを交換する際は、多目的トイレの汚物入れに捨てることができます。自宅で処理する際は、ビニール袋に入れ、自治体の指示に従いましょう。
おむつやパッドが長時間肌に触れていると、ムレやこすれなどから肌荒れにつながることがあります。肌荒れ防止のために、おむつやパッドは可能な限りこまめに取り替え、清潔に保つ意識を持ちましょう。また、「皮膚をこする」「何度も石けんで洗う」などの行為は、皮膚が荒れる原因にもなります。 石けんで洗う場合は、1日2回程度にとどめるようにしてください。
Q.においが気になるときはどうしたらよいですか?
A.おむつやパッドを装着しているときに気になるのであれば、例えば、抗菌消臭成分が配合されたおむつや、衣類や空間の尿臭などに効果のある消臭スプレー、消臭効果のある洗濯洗剤などの消臭対策製品を選ぶなどで軽減することができます。
尿や便が付着した衣類やシーツ類は早めに交換し、使用済みのおむつやパッドは素早くビニール袋に入れ密封します。このとき、袋の中に消臭スプレーをかけることで効果的ににおいを抑えることができます。おむつ用の消臭袋を使用するのもよいでしょう。それでも気になる場合は、脱臭機(脱臭機能付きの空気清浄機)の使用も検討してください。
食事面でできる対策としては、便のにおいが強くなりやすい食品(ネギ、ニラ、チーズ、ニンニク、 アスパラガス、卵など)や下痢を起こしやすい食品(冷たい飲み物、 ビール、 牛乳、 いか、 たこ、 揚げ物など)を控えめにすることが挙げられます。また、水分の摂取量が少ないと、尿のにおいが強くなりやすいので、水分はこまめに摂るようにしましょう。
※さらに詳しい対策を知りたい方は『尿や便のにおいが気になる』をご覧ください。