プロフィール
埼玉県在住。夫と子ども(10歳・8歳)の4人家族。派遣・業務委託・フリーランスという3つのスタイルを組み合わせて働く。
2018年3月(当時39歳)にステージ4の胃がんと診断される。抗がん剤治療のあと、胃の全摘手術を経て、再び抗がん剤治療を行う。2022年9月に休薬(無治療)を選択し、現在は経過観察中。
何かと理由をつけてパーティを開き、家族や友人と盛り上がるのが好き。週末は子どもが寝たあとに夫婦で食事をしながらテレビや会話を楽しんでいる。
治療を開始した患者さんのなかには、手術後の体の変化や日々の体調によって、“食事”が思うようにできない方がいるといいます。とくに退院後、自宅に戻ってからの食事は、本人に委ねられているため「どんなものを食べるといいか」「どう対処するといいか」悩む方も少なくないようです。
T. Y. さんは現在、経過観察4年目。ご自身の治療生活を振り返って「何が起きるのかわからないから、いつも手探りの状態でした。前もって何が起きるかわかっていたらもっと心に余裕をもてたと思います」と言います。
7年前に経験した胃を切除する手術を境に、食事との向き合い方はどのように変化したのでしょうか。「気になった症状」「そのときの気持ち・知りたかったこと」「食事への対処・工夫」「日常の出来事やイベント」といった4つの項目ごとに、時系列で振り返ってもらいました。
(編集部注:ご本人の感じ方や表現を大切にするため、アンケートの回答はできるだけ原文のまま掲載しています)
手術前
気になった症状
- 手術に向けてケモ(抗がん剤治療)をお休みしていたので、薬の副作用はあったが、ごはんは割と食べれる
そのときの気持ち・知りたかったこと
- 手術の成功を祈ることで精いっぱいで、「胃を切った後」の食事の心配をする余裕はなかった
- 痩せても食欲不振でも「生きていればいいじゃん!」って感じだったので、術後のことはいったん考えないようにしていた
- 手術前は休薬しないといけないので、「この間にがんが大きくなったらどうしよう?」という不安と戦っていた
- とはいえ、今後どのような生活になるのか、簡単にイメージしておきたかった
- 一般的にはどの程度痩せるのか、気になっていた
食事への対処・工夫
- 手術前は意識的に免疫アップの食材を多めに食べて、元気を蓄える
- 術後の生活やどの程度やせそうか? といった疑問は、主治医に質問して教えてもらった
日常の出来事やイベント
- 「胃」と永遠のサヨナラになるかもしれないので、最後の晩餐に焼肉を食べに行った。今までの胃の活躍に感謝をした
手術後(入院中)
気になった症状
- 手術の傷の痛み
- 軽度のダンピング(初体験)
そのときの気持ち・知りたかったこと
- 最初のひと口は、どのくらい飲めるかおそるおそる
- ダンピングってどんな感じだろうか?
- ダンピングが起こったら自分で対処できるだろうか?
- ダンピングを起こさないためにはどうすればよいか?
- 今後の食事で気をつけることは?
- 体重を減らさないためにできることは?
食事への対処・工夫
- 術後はじめて水を飲む許可が出たとき、主治医に立ち会ってもらった。飲む量がわからず緊張したが主治医が「もっと普通にごくっと飲んで大丈夫だよ」と言ってくれて安心した

- 主治医に「ダンピングがきたら、どうしたらいいかわからなくて不安」と相談した。その際、「入院中に一度ダンピングを経験できるといいね。家に帰って一人で経験することになったら慌てちゃうよね。でもわざとダンピングを起こそうとしなくていいからね。」という話になった。すると本当に入院中に軽度のダンピングになり、主治医が来てくれて「それがダンピングだよ。特に対処法はないから症状が過ぎるのを待つしかないね」と教えてもらった。はじめてのダンピングが病院内で安心感があった
- 時間をはかりながら食事をした
- 具体的には、毎回の食事に30分かけることを目標にした。さらに10分ずつ時間を区切って、10分ごとに1/3量ずつ食べ進めるようにした(早食い防止)

- 今後の食生活については「退院時の栄養指導」で学んだ
- 体重を減らさないためにできることについては、有効な情報には出会えなかった。なので自分なりに「できるだけ食べる量を減らさないようにしよう」と心に決めた
日常の出来事やイベント
とくになし
退院~1カ月
気になった症状
- 注意しているので、たまにダンピングがある程度(「胃が無い」状況に慣れてきた)
そのときの気持ち・知りたかったこと
- 食事のときはおそるおそる
- 痩せたくない、たくさん食べるぞ
- 詰まりやすい食材は何か?控えめにしておきたい
- 具体的な調理方法はどんなのがある?
- カロリーの高い食べ物は何?
- 免疫アップの食材を食べたい(キノコ・根菜スープとか)
食事への対処・工夫
- まだ一度に量が食べれないので、食事を出しっぱなしにしておいて、ことあるごとに食べていた(洗濯とかトイレに行くついでとか)
- 自宅では「時間無制限の食べ放題」スタイルで、時間に縛られずに「食べれる時に、食べれる量を、精一杯食べる」(正確に伝えると「食べたい量の食事」をテーブルに出しておき、時間は気にせず、ダラダラしながらでいいから「たくさん食べること」に注力していた)
- 外出時は軽食(スティックパン・小さなおにぎり)を持ち歩き、食事の時間にかかわらず、食べれるときに食べていた(立ったままとか、ベンチに座ってとか)
- キノコは詰まりやすい(腸閉塞)のでブレンダーで細かくしていた
- 根菜は細かくサイコロに切ってスープに(5日分くらい作り置き)
- 手術直後から1カ月の間は「練習期間」という位置づけで必死で食べていた
- 最初の1カ月くらいは「ハイカロリードリンク」を飲んでいた
- 既製品の購入時は「よりカロリーが高いもの」を選ぶようにしていた
- 退院時の栄養指導で「胃なし食事」の大枠の知識は得られていたが、その他細かい疑問については、書籍を数冊購入して情報収集した
日常の出来事やイベント
- 退院翌日に家族で公園へ。外でおにぎりランチ
- 子どもがまだ小さかったので、体調の良いときはよく公園に行っていた。外は人目もあまり気にならず、間食しやすかった
1カ月~100日
イベント好きなので、赤ちゃんが生まれてから100日目に行うといわれている“お食い初め”と絡めて「100日」を区切りに考えていた。
気になった症状
- 調子に乗って食べ過ぎると、ダンピングの回数が増加してしまう
- 逆流(就寝時)
そのときの気持ち・知りたかったこと
- 食事(食べること)に慣れてきたかな
- 痩せないようにがんばって食べる
- 油ものなど食材や調理方法の幅を広げたい
- 何がダンピングになりやすいか「復習」したい(一度聞いたくらいでは記憶が定着しないから)
- 食事について他の人の体験談や工夫が知りたい
- 眠いのに横になれないから逆流がつらい。何か対策はないか?
食事への対処・工夫
- 何の料理・食材でダンピングになりやすいか経験値を積む
- 油っぽいものや麺類など、自宅にいるときにチャレンジする
- 以前に購入してあった書籍を簡単におさらい
- 病友やブログから「他の人の食べ方や工夫」を自分なりに調べた
- 逆流(※)は病友や看護師にいろいろ質問してみたが、良い対策に出会えなかった
※「逆流」については、数年後に主治医より「水を飲んで押し返す」というアイデアをもらい、試してみると効果を実感。(この情報にたどり着くのが遅すぎた! この時に知りたかった…)
日常の出来事やイベント
- 自宅に知人を呼んでパーティー(1カ月後)
- ヨガサークルへの参加を再開(1カ月後)
- 外食再開(夫と近所の和食)(2.5カ月後)
100日~1年
気になった症状
- 下痢(一過性なので困り続けることはなかったが、食べると下すことがあり、気になった)
そのときの気持ち・知りたかったこと
- 油ものを食べると下痢になりやすい気がする。下痢になりやすい食材って何かあるのかな? 経験値を積んでいこう
- 慣れてきたので外食や会食を解禁していこう
- 外食の時、たくさん残すことになったら嫌だな…
食事への対処・工夫
- 何の食材で不調をきたしやすいか? なんとなくではあるが、実体験から把握しようと努めた
- 色々な食事の経験を積んでこれたので、より快適に食事ができるよう心がける
- 外食するときは、念のためタッパーを持参した。その場で無理して食べずに、持ち帰ってもよいものは、テイクアウトにさせてもらった
日常の出来事やイベント
- 知人の家でパーティ(家族参加/4カ月後)
- 旅行(5カ月後)
- 病友との外食ランチ(単身参加/8カ月後)
1年~3年
気になった症状
- 貧血(氷食症も)
- 調子に乗るとダンピング増加
そのときの気持ち・知りたかったこと
- 氷食症になっちゃった。誰も取り合ってくれなくて解決策がわからない。困った
- 結構食べれるようになってきたな。どんどん食べるぞ~。でも調子に乗るとダンピングするからゆっくりほどほどに
食事への対処・工夫
- 貧血の改善につながったら嬉しいなという期待をこめて、ビタミンB12の注射を定期的に打ってもらう
- 氷食症について、主治医から明確な話が聞けなかったので、ネットを調べた。「氷食症は鉄不足」と書いてあったので、鉄サプリを飲み始めた
- 鉄分が多いと言われているレバーの料理を週に3日食べた(少量だけど、ペーストや煮物など)
- 苦手な食材や調理方法がなんとなくわかってきたので、「苦手」と向き合うときは量を減らすよう心がけた

日常の出来事やイベント
- 外食ラーメンにチャレンジ(夫と/1年後)(ラーメンは残したくないので、単身だったらたぶんまだ行かなかった)
【やらなくて後悔したこと】 私は実体験から「自分の苦手」を把握しようとしたが、今から思うと、手術直後に読んだ「胃を切った人向けの食事本」を<術後1年>のタイミングで復習すればよかった。実践に頼りすぎて、初期に学んだはずの「胃なし食事の一般論」は忘れてしまっていた。知識を復習していれば、防げた「やらかし(不調)」もあったかもしれない。
3年~現在(7年後)
気になった症状
- 貧血(氷食症も)(3~4年の間)
- 調子に乗るとダンピング機会が増加
そのときの気持ち・知りたかったこと
- 3~4年の間は相変わらず氷食症で困っていた(なお、5年たったころには貧血が改善し、氷食症も治った)
- 生クリーム食べると下痢になりやすいと感じていたが、久しぶりに読んだ「胃を切った人向けの食事本」にもそれが書いてあって、経験則の答え合わせができてスッキリ
食事への対処・工夫
- 特別な調理上などの配慮がなくても食べれるようになったので、より快適な食事ができるように、「調子に乗らない」ように心がける
日常の出来事やイベント
- 胃がある時とほとんど変わらず、外食や旅行などイベントを楽しむ
現在は経過観察中のT. Y.さん。現在の食事の取り方に行き着くまでには数々の試行錯誤もあったようですが、その経験があったからこそ、自らのペースで治療生活ができるようになったといいます。


