プロフィール
夫と息子(21歳)の3人家族。埼玉県在住。当時勤めていた会社(物流関係)の健康診断で乳腺腫瘍(しゅよう)が見つかり、精密検査の結果、2022年4月にステージ3の乳がん・ホルモン受容体陽性タイプと診断される。右乳房を全切除し、自家組織で再建。切除手術と同時に行った再建手術1回目(エキスパンダー挿入)のあとに抗がん剤治療を行い、再建手術2回目(自家組織への入れ替え)完了後に放射線治療、ホルモン療法を行う。現在もホルモン療法を継続中。
途中で一度職場復帰するが右腕にリンパ浮腫が生じ、仕事での荷物の持ち運びに支障が生じたため退職。現在は求職活動中で、専業主婦としてこれまでのように家事をこなしつつ、旅行や趣味など活動的な時間を送っている。
多くの患者さんが経験する抗がん剤治療による副作用。今回は、ステージ3の乳がんと診断され、右乳房切除と再建を行ったAさんが経験した副作用や後遺症のなかから、脱毛の症状について話を聞きました。医療用ウィッグの活用と、再現美容師さんについて詳しく教えてもらいました。
主治医から教えてもらった「再現美容師」との出会い
―― 乳がんの治療に関する副作用について、医師からいつどのような説明をされたのか教えてください。
治療方針が決まって、主治医から「今後こういう治療をやっていきます」という説明をされたときに、抗がん剤治療による副作用についても説明を受けました。人によって差はあるものの、多かれ少なかれほぼ100%脱毛は起こるだろうという内容でした。
自分でも、抗がん剤治療を行うと脱毛の副作用が起こるだろうということは知っていたし、抜けてもまた生えてくるということは聞いていたので、説明を受けたときはそれほど気にしてはいませんでした。
もし髪が抜けてしまったらかぶろうと思い帽子を買ったり、先生からおすすめのウィッグについても教えてもらったので、自分でも調べたりしましたね。あと、治療前は髪の毛が長かったのですが、インターネットで調べていたら事前に短く切っておいた方がいいという情報を見つけたので、準備はしていました。
―― ウィッグについては、主治医から紹介してもらったのでしょうか?
主治医から医療用ウイッグを扱うプロである再現美容師さんという存在を教えてもらいました。「ほかの患者さんが使っていたけど本物の髪に近くてウィッグに見えなかった」とのことだったので、お店の名前を教えてもらい、自分で情報を検索して電話しました。
そこは、ふだんは普通の美容室なのですが、病気の方向けの医療用ウィッグも扱っているお店だったんです。「がん患者さんを多く診ている病院の先生がおすすめするなら間違いない」と思ったこと、また価格もほかの大手メーカーでは30~40万円くらいする*ところ、そこでは12~13万円ほどだったこともあり、すぐにその美容室でウィッグを作ることを決めました。電話で先に購入を約束してから実際に店舗で試して購入したのですが、自分としては満足な結果でしたね。
* ご本人が調べた範囲での情報です。これより低価格のものもあります。
―― 医療用ウィッグの購入を検討するにあたり、主治医からおすすめされたお店以外にも情報を集めて比較などはしましたか?
実際のウィッグがどういう感じのものなのかも、かぶり方すらも一切わからない状態だったので、購入する前にまずはインターネットでいろいろ調べてみました。でも、ファッションウィッグについてはたくさん情報が出てくるものの、医療用ウィッグについてはあまり情報が見つからなかったですね。
あとネットで通信販売されているウィッグはお手入れなどのアフターサービスがついていないものも多く、一方でつくものは手が出せないような高額なところも多くて…。
主治医からも、普通のファッションウィッグではなく医療用ウィッグがいいということは言われていたので、具体的なことは美容室の方に直接一から教えてもらいました。
ウィッグを売って終わりというメーカーも多いと思うのですが、私が購入したところはウィッグを使って以前の髪形を再現するというコンセプトのお店だったので、そこを選んでよかったなと思っています。当時は治療のために、勤めていた会社を休職していたのですが、会社の人に会っても脱毛したことがわからないように、休職する前と同じ髪型になるように整えてもらいました。
ウィッグがもたらした苦労とメリット
―― 医療用ウィッグを実際に使うにあたり、大変だったことがあれば教えてください。
髪の毛が残っているとウィッグをピタッと装着できないので、まずきれいに剃ってもらう必要があるんです。抜け途中が一番見た目が気になるし、髪の毛もバラバラ落ちてきて掃除も大変なので、本当は髪の毛が抜ける前にすべて剃ってもらって装着しようと思っていました。でも、そのタイミングで新型コロナウイルスに感染してしまって。なので、私の場合は抗がん剤治療開始から1カ月くらい経ち、ある程度髪が抜けたあとに、ウィッグを購入した美容室で髪の毛を剃ってもらいウィッグを使い始めました。
ほかにも、抗がん剤を使用している時期は毛が抜けるだけじゃなくて頭皮の状態が悪くなることもあるんです。脂が出やすくなって、蒸れたり臭いが気になったりすることもあります。とくに夏は蒸れやすいので、時々ウィッグを外して頭皮やウィッグをペーパーで拭くなどのケアも必要です。
あと、ウィッグ本体のほかにも必要なアイテムがあって、ウィッグの中にかぶるインナーキャップも夏用・冬用などいろいろ種類がありますし、くしもウィッグ専用の物をそろえました。
洗い方などのケア方法のレクチャーも含めて、すべて美容師さんに細かく相談してトータルでお世話になりました。
副作用が落ち着いて髪の毛が生えてきてからも、1年くらいは調整してもらうためにその美容室に通っていましたね。
―― ウィッグがあったことで、生活面や精神面にどのような影響がありましたか?
装着感も気にならず、引っ張っても取れないし、ウィッグの技術にびっくりしました。なので、脱毛に関しては不安になることもありませんでした。
あと、ウィッグがなかったら治療後すぐに会社に復帰するのもむずかしかったかもしれません。ウィッグではなく、帽子をかぶった状態で復帰するのは避けたいなと思っていました。帽子だと不自然な場面もあって、おそらくまわりの人も「なんで帽子をかぶってるの?」と気になってしまうこともあると思うんです。
私の場合、一部の人にしかがんのことを伝えておらず、同僚にもずっと言わないようにしていました。そういう状況だったこともあり、ウィッグは絶対必要でしたね。
髪以外の脱毛で気づいた意外な不便さ
―― ここまで髪の毛の脱毛に関して話を伺いましたが、髪の毛以外の脱毛でエピソードがあれば教えてください。
髪の毛以外にも体の毛はすべて抜けてしまうのですが、意外と不便に感じたのがまゆ毛の脱毛です。汗をかいたとき、まゆ毛がないと汗がそのまま目に入ってきてしまうんです。普段のメイクで見た目はカバーできるのですが、汗は防げないですよね。汗が目に入るとすごく痛いので、まゆ毛のありがたみがよくわかりました。
まゆ毛のメイクについても美容師さんに教えてもらいました。再現美容師さんは全国にいるので、もしまわりの人が治療による脱毛に悩んだら再現美容師さんをおすすめすると思います。


