プロフィール
夫婦と息子(3人兄弟の末っ子)との3人で暮らす。群馬県在住。主婦業のかたわら、20年近く自治体のボランティア活動にも参加し、今は体の不自由な夫のケアもしている。
2015年(当時52歳。今は独立している長男・次男も一緒に5人で暮らしていた)に市のがん検診でステージ3の胃がんが見つかり、胃の4分の3を切除。その影響で15kgの体重減少を経験。その後は抗がん剤治療を経て、経過観察中となり、現在は血液検査、胃カメラ、CT検査を1年に1回ずつ受けている。
52歳のとき、知人の死をきっかけに市の検診を受けたことで胃がんが見つかったM. H.さん。胃の切除手術や抗がん剤治療を経験してきた彼女が、どのような流れで闘病生活を送ってきたのか、気になる費用や副作用についても語ってもらいました。
軽い気持ちで受けた検診で胃がんが見つかる
―― がんが見つかったときの経緯を教えてください。
52歳のとき、仲の良かった知り合いが胃がんで亡くなりました。そのことがきっかけで、自分も念のため検査を受けてみようかと思っていたところ、ちょうど市のがん検診の締め切りも迫っている状況でした。
「予約が取れそうだったら受けてみようかな」というくらいの、軽い気持ちで検診を受けたんです。当時はとくに症状も出ていなかったし、毎年健康診断で受けていたバリウム検査でも異常が見つかることはなかったので、まさか自分ががんと診断されるなんて思ってもいませんでしたね。
そして、その検診の結果胃がんが見つかり、おそらく胃は全部取ることになるだろうと伝えられました。検診を受けたところは町の診療所だったので、手術を行う前提で大きな病院か、がんセンターに行ってくださいという話になりました。
検診を受けたのが12月15日で、その4日後の19日に結果を聞きに行ったら胃がんだと伝えられ、紹介状をもらったという流れです。
知識も心の余裕もないまま臨んだ胃の切除手術
―― 紹介状をもらったあと、転院から手術までの流れを教えてください。
結果がわかったのが12月19日の土曜日だったので、その翌週の火曜日に紹介状を持って大きな病院に行きました。でもその日は非常勤の先生が担当だったので、常勤の先生がいる日に出直すことになったんです。そして25日の金曜日に再度病院に行って診察を受け、翌週28日の月曜日に入院となりました。
当時私は貧血気味で、この状態のままでは手術は危険ということになり、入院してまずは体質改善をしましょうということになりました。お正月は食事療法などを受けながら病院で過ごしました。
そして1月5日に手術を受けました。この手術で胃を全部取ってしまうものだと思って挑んだのですが、結果的に胃を4分の1くらい残せたと、手術が終わってから聞きました。
―― 手術や治療の内容などは、事前に説明を受けていましたか?
初めての入院、そしておなかを切るという初めての大きな手術だったので、そのことにばかり意識が向いてしまって…。主治医の先生から詳しい説明を受けたかもしれないのですが、話をちゃんと聞いていなかったというか、話をした記憶がないんです。
あと、何か説明を受けてもそれに返すような知識も心の余裕もなかったので、もうすべて先生にお任せしますという状態でした。
胃を切除して15kgも体重が減少
―― 手術後、退院するまでの話を聞かせてください。
手術のあと、退院するまで2週間弱かかりました。当時(52歳)、そこに入院している人のなかでは一番若かったこともあって「若いんだからすぐ歩きなさい」と言われて、とにかく歩かされましたね。でも、開腹手術をした割には思ったほど痛みもなく、比較的楽に過ごせていたんじゃないかと思います。
ただ、手術前に60kgあった体重は入院中に15kg減りました。手術のあとはずっと何も食べずに過ごしていたのですが、数日経つと「そろそろ何か口に入れたいな」と思うようになり、先生とも相談して、術後10日ほど経ってからやっと食べ物を口にしたという感じです。
当時も今も、食べると吐き気を感じたり下痢をしたりすることもあるのですが、今現在は5kgくらい体重が戻っていて、先生にも「胃を取ったのに太れるのは優秀だね」と言われました(笑)。
3年間続けた抗がん剤治療
―― 抗がん剤治療を受けることを決めた経緯を教えてください。
胃の切除手術が終了したあと、先生から「まだ若いから、抗がん剤でがんを抑える治療を行った方がいいと思います」と言われて、抗がん剤治療を始めることにしました。2016年から2019年まで約3年間続けましたね*。もともと3年間やりましょうと決まっていたわけではなく、途中で白血球の数値が下がりすぎてしまって、それ以上治療を続けられないという状況になり終了しました。
でも、自分としては、抗がん剤治療はがんに対しての保険というイメージを持っていたので、治療をやめるのは怖かったです。やめることによって悪くなるんじゃないかなとか、またがんが元気になっちゃうんじゃないかなとか、不安はありました。
* 胃がんの手術後に受ける術後補助化学療法の標準治療では、抗がん剤治療の期間は1年または6カ月が標準的です。M. H.さんは医師との相談のうえ、何らかの理由により1年以上抗がん剤治療を継続しました。
―― 抗がん剤治療にはどれくらい費用がかかりましたか?
私の場合はカプセルタイプの飲み薬を処方され、通院しながら治療を受けていました。少し記憶が曖昧ですが、薬を28日間飲み続け、2週間休み、また28日間飲み続けるというサイクルだったと思います。
保険屋さんの営業トークで「がんになったらお金がかかりますよ。何百万円も必要になりますよ」と言われたこともあり、がんに関する薬は高額というイメージを持っていました。
でも実際は、確かに少し高いかなと思う額ではあるものの、思っていたほど高額ではなかったというのが本音です。28日分の薬代で(自己負担額は)14,000〜15,000円くらい、途中からは10,000円ほどとなり、何百万円も必要になることはなかったです。
抗がん剤治療による影響は人それぞれ
―― 抗がん剤治療を受けたことで、生活への影響はありましたか?
当時は夫も働いており、私は専業主婦で、ずっと参加していたボランティアもお休みの調整がついたこともあり、生活への大きな影響はそれほど感じませんでした。ただ、子どもの学校行事や部活のお手伝いに行けないときはありました。
抗がん剤治療中は免疫力が落ちていることもあり、風邪などを引かないように寒い日は出歩くのを控えるなど、無理せず自分の体を守ることも大切だと思います。
―― 副作用はありましたか?
ほとんどなかったと思います。多少髪が薄くなったかもとは思いました。でも、よくテレビで見るような、ちょっと髪を触ったらごっそり抜け落ちるとか、そこまでではなかったです。
むしろ、副作用がないことが心配で、先生に相談したこともあります。がんの副作用は苦しいとよく聞いていたので、全然苦しくないということは薬が効いてないんじゃないかと不安に思ったんです。先生からは「今は副作用が出にくい薬もあるんですよ」と説明を受けました。個人差もあると思うのですが、副作用もあまり感じることなく治療を受けることができたのでよかったと思っています。
