プロフィール
2014年2月、当時26歳という若さでS状結腸がんを罹患。罹患と同時期に結婚し、現在は妻とふたり暮らし。罹患当時はステージ2のS状結腸がんと一次診断されていたが、術後の病理検査で27カ所のリンパ転移が見つかりステージ3Bと確定。術後の抗がん剤治療をきっかけに、食生活を見直し、運動や職場環境を改善するなどで、罹患時から30kg減量したほか、フードコーディネーターなどの資格も取得。自身のライフスタイルが大きく変わり、2019年3月に完治(通院終了)。
現在は自身の経験を活かして、ほかの患者さんが前向きに治療に向き合えるようにと患者会やがんサロンの運営に励んでいる。
26歳のとき、結婚に向けた両家顔合わせの食事会の直前にがんが見つかったK. K.さん。以前は毎日のように飲み歩いていたお酒好きなK. K.さんですが、大腸がんに罹患し、つらい抗がん剤治療に負けそうになる中で、食事を見直すことで自分を変えていったとのこと。どのようなきっかけでどう変わっていったのか、語ってもらいました。
抗がん剤治療をきっかけに、食事を見直す
―― 抗がん剤治療の副作用でメンタルが落ち込み、そこから立ち直るため食事改善に取り組んだとのことですが、その経緯を教えてください。
抗がん剤の副作用について自分でも調べたのですが、抗がん剤治療では、がん細胞だけでなく通常の細胞もダメージを受けてしまうということを知りました。さらに調べる中で、自分の免疫力を高めることで、副作用を減らせるのではないかと考えるようになりました。
そこで、免疫力を高めるにはどうしたらいいんだろうといろいろ調べていった結果、食事が大切という考えに行き着きました。
あとほかにもきっかけがあって、『ワンピース』という漫画の中で「サンジ」という料理人のキャラクターがいるんですが、料理が体をつくるというセリフや、仲間のみんなを強くするための食事を作るというシーンが印象に残っていて。その影響もあって、食事を見直すようになりました。
―― 食事を変えようと思っても、何から始めたらいいかわからない方もいるかと思います。K. K.さんはどんなことから始めましたか?
まず、自炊をするようにしました。そして野菜や果物を毎日10種類以上食べる。結構難しいと思う人も多いようですが、ルーティン化してしまえば意外と苦労することなく取り組めました。
―― 実際にどのような料理を作っていたのですか?
個人的には、素材のまま食べるのが一番良いと思っています。例えばキャベツも生で食べます。
以前、自分でリサーチしていたときに見た文献で、生活習慣対策にニンニクやキャベツ、トマトやブロッコリーが推奨されていたので、それらの野菜をサラダにして毎日食べるようにしています。
サラダ以外にも、小松菜やほうれん草、にんじんや大根、きのこ類など、季節の野菜や鶏肉なども追加して、鍋で煮込んで食べることも多いですね。味付けをいろいろ変えていくと飽きずに食べられます。
あとキャベツは、1玉買って一度に使い切れないと徐々に傷んでいってしまうので、最初に生で食べて、少し劣化が気になってきたら茹でたり、焼いたり、炒めたり。調理方法を変えることで飽きずに消費することができます。
食事改善を続けるために必要なマインド
―― 無理なく食事改善を続けるためのモチベーションについて、工夫やアドバイスはありますか?
がんになってから心理学や脳科学を勉強したことで、セルフコントロールといいますか、自分の脳をだまして習慣化するという考えにたどり着きました。
それでたばこもやめられたんです。「たばこは体に悪いものだ」という考えを脳に刷り込んでいくうちに、たばこのにおいがしただけでもう近寄りたくないし、嫌だなって感じるようになりました。
本当に思い込むだけでできるの?と疑問に感じるかもしれません。特に必要に迫られていない人は難しいかもしれませんね。でも、追い込まれたり、自分にとって本当に必要なことなんだと真剣に向き合えば、続けられると思うんです。
―― がんになる前は飲酒もされていたそうですが、お酒もやめたのですか?
お酒を楽しむことは自分の生きがいなので、飲酒だけはやめたくないと思ってます。でも、たばこはそこまででもないのでやめるようにしました。
あと、自炊するときも、お酒のおつまみとなるような野菜料理を作ることも多かったです。そうやって、自分の好きなものと絡めて自炊を好きになっていくのもいいかもしれません。そうすると毎日自炊をすることも苦ではないし、大好きな飲酒はさらに楽しくなりました。
勉強の末、食に関する資格も取得
―― フードコーディネーターや食生活アドバイザーの資格をお持ちですね。それも食への意識が変わったことで資格取得につながっていったのでしょうか?
フードコーディネーターや食生活アドバイザーの教科書に載っている内容が、食に関する基本的な内容を網羅していると感じたので、せっかく勉強するなら一緒に資格も取った方がいいなと思いチャレンジしました。
つらい抗がん剤治療を続ける中で生きるスイッチが変わったというか、健康的に生きようと思ったところから考え方も大きく変わりました。
―― 資格取得のための勉強は難しくなかったですか?
自分が知りたくて勉強していることなので、そこまで苦ではなかったです。もともと資格を取るために勉強しているのではなく、食について勉強するついでに資格を取るという考えでした。自分が勉強したかった通過点に、資格取得が存在するというイメージです。
―― 資格を取得してから、意識や行動などは変わりましたか?
いつも野菜はスーパーで買っていたのですが、農薬や化学肥料が気になっていて。それで畑を借りて、自分で野菜を作り始めました。
ほうれん草や大根、にんじんなどいろいろ育ててみましたが、特に小松菜はしっかり味が感じられて、今まで食べていたものと全然違って驚きましたね。普段食べていた小松菜の味が10%だとすると、自分で育てたものは40%くらいに感じるような。野菜の中に味がしっかりと凝縮されているイメージで、さらに食に関する興味が高まりました。
食事を見直すことで変わったこと
―― がんになる前となった後、食事を見直したことでどのような変化がありましたか?
がんになる前は、ラーメンを1週間に8杯食べたり、ほぼ毎晩、居酒屋でお酒のおつまみを食べるというような食生活を送っていました。
でもがんになってからは、野菜中心の自炊を続けて、あとほかにも、加工食品は極力買わないようにするなど食生活への意識はかなり変わりました。お惣菜も買わないし、レトルト食品なども食べないですね。ラーメンは好きなので、1カ月に1回ぐらいのぜいたく品として、ストレス解消のために食べることはあります。
食生活と運動習慣の改善の結果、トータルで30kg痩せました。
―― 大腸がんに罹患された方で、術後どういうものを食べたらいいか悩む方も少なくないと思います。意識した方がいいことなどアドバイスはありますか?
意識しすぎて極端になりすぎないように、そして偏らないように、その食事が自分の体に合っているかを考えることが大事だと思います。
実は私はお肉を食べるとすぐ胃もたれしてしまうので、体に合っていないと考えて極力食べるのは避けていますが、お肉を食べて元気が出る人は積極的に食べればいいと思っています。自分の体が喜んでいるか喜んでいないか、自分の体と向き合って食生活を決めていくことが大切です。自分に合わせてバランスよく、がポイントだと思っています。