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体験談
胃がん

がん治療中の旅行 〜自分が好きなものに会いに、好きな場所へ〜

#趣味#食事
公開日2023.05.24
お名前
Tさん
性別
女性
罹患時の年齢
30代
がん種
胃がん

【プロフィール】

千葉県在住。夫と息子(高校2年生)の3人暮らし。

2017年(当時35歳)、人間ドックで胃がんが見つかり、胃の5分の4を切除。生検でステージ4、余命1年半と診断され、手術の1カ月後から抗がん剤治療(化学療法)をスタート。2019年には卵巣転移が見つかり再び手術を行う。

闘病生活を経て2022年5月の検診で治療終了となり、2022年現在、術後5年(12月)に向けて経過観察中。

仕事は教育関連企業の事務職。抗がん剤治療開始時に退職を余儀なくされたものの、1年半後に復帰し、フルタイムで勤務中。趣味は競馬場で好きな馬を見ること、好きなアイドルのコンサートに行くこと。


***


好きな馬を見に行ったり、アイドルのコンサートに行ったりと、全国各地に積極的に旅行を楽しんでいるTさん。がんになったからこそ自分の行きたい場所へと旅行をしやすくなったのではないか、と言います。治療をスタートしてから初めて行った旅行のこと、持ち物の工夫などについて、当時を振り返りながら語ってもらいました。


“行きやすい場所”ではなく、“行きたい場所”を選びたい


――最初は、闘病中に旅行をすることへの不安はあったのでしょうか?


今では旅行に対する不安は全くないのですが、治療が一段落して初めて旅行をするときはかなり不安でした。途中で気持ち悪くなったらどうしようといった体調面はもちろんですが、ウィッグだとバレないかな、貧相な体型で歩いているとどう見られるのかな、食事はできるかな、まわりに迷惑をかけたら嫌だな……など、さまざまな思いがありました。


――他の患者さんたちがどこへ旅行をしているのかなど、調べたりしましたか?


調べるとしたらSNSや知恵袋のようなサイトで質問をするのが近道かなと思いますが、私は全く調べませんでした。“闘病している人が行きやすい場所”ではなく、「今、自分が行きたいと思う場所」を選びたかったので。


体調が良くなくても、馬に会いたい気持ちが勝った


――その行きたいと思った場所とはどこだったのでしょう。また、どのタイミングで行きましたか?


2018年の1月から6月頃までは入院が必要な抗がん剤治療をしていて、その間は旅行に行きたいという気持ちにはなれませんでした。でも退院後、7月の初旬には出かけていましたね。


行った場所は「福島競馬場」です。実は私は馬が大好きなんですが、そのとき応援している馬が福島競馬場で走る、特別なレースがあって。体調はそこまで良くはなかったんですが、行きたい気持ちのほうが勝りました。


――馬を好きになったきっかけはあったのでしょうか?


初めて競馬を見たとき、その走る姿がすごく美しいなと感動したのが、馬を好きになったきっかけです。それから馬に乗れる機会があれば乗ったり、子どもに乗馬を習わせたりしています。


福島競馬場で見たのは“オジュウチョウサン”という名前の、障害競争でしか走ったことがなかった馬。強すぎて平地のレースにも出ることになり、その初めてのレースだったんです。さらに騎手は武豊さんで、「これは行きたい!」となったんですよね。


会社の馬サークルの仲間に自宅からピックアップして連れて行ってもらい、帰りも送り届けてもらいました。大好きな馬を見られたことでアドレナリンが出たんでしょうか、帰ったらすごくぐったりして2日間くらい寝込んでしまいました。


――闘病中であることを忘れるほど楽しかったんですね。


はい、好きなことをしているときは闘病中のつらさを忘れてしまいますね。


ただ福島に行って残念だったのは、保育園から中学校時代の同級生もそのとき来ていたのに会わなかったこと。「今、私もいるよ」とLINEに連絡が来ていたけど、痩せている姿を見られたくないと思ってしまい、LINEに気づかないふりをして会わずに帰ってきてしまいました。今思うと、会っておけばよかったです。


福島旅行の1カ月半後には、北海道へ2泊3日の家族旅行に行きました。泊まりなのでウィッグはどうしようかな、もりもり食べたいけど大丈夫かな、といった不安がありましたが、家族にサポートしてもらいながら楽しむことができました。


本当は投薬をする時期と旅行の時期が重なっていたのですが、主治医の先生に相談したら「もう少し休薬してもいいよ」と言ってもらえて。おかげで旅行中に(投薬によって)気持ちが悪くなることはありませんでした。その後は旅行のときも抗がん剤を持参しているのですが、当時は初めての旅行だったので先生に相談してよかったなと思います。


手術後すぐ、好きなアイドルのコンサートへ


――他にはどのような旅行をしましたか?


翌年(2019年)には、好きなアイドルのコンサートでも北海道に行きました。経過観察中に卵巣に転移が見つかり、手術をしたときのことです。


コンサートが5月だったので、先生と相談して手術日を4月と決めました。飛んだり跳ねたりしても大丈夫かどうかもちゃんと確認して、「いいですよ」と言ってもらって。


コンサートには、ウィッグをつけた上に帽子をかぶって行きました。そこまで高さのある帽子じゃなくて普通のニット帽だったんですが、後ろの席の人に「見えづらいんで帽子取ってもらえますか」と言われてしまったんです。それで帽子を取ったけど、飛び跳ねてるときにウィッグずれないかな、と心配でしたね。でも結局、ウィッグがずれないように頭をたまに押さえながら飛び跳ねちゃいました(笑)。


あと私はラッキーなことに、いつも一緒にコンサートに行く友達が看護師をしているので、どこへ行くにも安心できました。


旅行中の持ち物の工夫や、宿泊先に伝えていること


――旅行中はどのウィッグを使っていましたか?


自然に見える医療用のウィッグです。あとはウィッグにかける消臭スプレーやウィッグスタンドも必要なので、どうしても荷物が増えてしまいますね。


部屋で過ごすときはケア帽子をかぶっています。想像より頭皮は汗をかくし、ウィッグに臭いが付くこともあると聞き、できるだけかぶらないようにと思って。宿泊日数が長いときは、他にも帽子を持って行くことが多いです。


――お風呂や食事で困ったことはありましたか?


温泉に入るときに手術の傷を気にする人も多いと思いますが、私の場合、胃の切除は腹腔鏡手術でしたし、卵巣の手術の傷も4年前のことで今は目立たないので、あまり気にしていませんね。


食事についても、今は問題ないのですが、あまり量を食べられなかった頃は残すことが多くて罪悪感を感じることもありました。旅行先の料理は大盛りの場合が多く、食べ切れないことも多くて……。「自分は胃を切っているので」と伝えたいところですが、難しいですね。


家族旅行のときは家族に残りを食べてもらっていますが、その回数が頻繁なのでちょっと申し訳ないなと思っています。友達には残りを食べてとは今でも言えません。


――事前に宿泊先に伝えていることはありますか?


食事については、予約するときに「持病があるので、減らせるものは半分くらいに減らしてください」などと伝えています。事前に伝えておくと自然と宿の人も優しくしてくれるんじゃないかなと思っていて。旅行でたまたますれ違った人に「あの人、病気なのかな」と思われるのは嫌なのですが、宿の人には事情を知った上で配慮してほしいという気持ちがあります。まわりの人の優しさがあってこその旅行だと思いますね。


――交通手段のおすすめがあれば教えてください。


体調に不安がある人は、その不安を減らせる手段を選ぶといいと思います。車だったら体調が悪いときに後ろで横になることができるし、途中で止めてもらうこともできるのでいいと思いますよ。


ちなみに私は飛行機が好きなのですが、先日金沢に行ったときは普段できないことをしようと思い立ち、夜行バスで帰ってきました。がん患者でも体調がよければ夜行バスにも乗れるんです(笑)。


来年がないかもしれない、だから今行こうと思う


――さまざまな経験をしているんですね。がんになる前後で旅行の機会や頻度は変わりました?


がんを経験した今の方が、行きたいと思ったらすぐに実行できていると思います。病気じゃなかったら「まぁ来年でもいいか」と後回しにしたかもしれないけれど、私は「その来年がないかもしれない。だから行きたいときに行こう!」と。


行くときは正直、一人旅が一番気楽ですね。具合が悪くなったらいつでも休めばいいですし、誰かと一緒に行くとなると、まわりに余計な気を遣わせてしまうので。


もしがんにならなかったとしても、子どもが大きくなったタイミングで一人旅をしていたと思うのですが、すごく健康体だったら日常の家事や育児に追われて、自由に旅行に行くことがなかなかできなかったはず。今は病気と付き合っているからこそ、旅行をしやすくなっているのかもしれません。


――がん患者さんのコミュニティの方と旅行をしたり、話をしたりすることもあるのですか?


私の旅行は“推し(応援している人やモノ)”や“趣味”が目的なので(笑)、がん患者の方々と旅行に行こうと思ったことはないですね。私は子どもが大きいので、一人で出かけたり友達と出かけたりすることが多いですが、まわりの話を聞くと家庭がある人は家族旅行をする人がほとんどのようです。


ブログでは旅行に行ったことを書くこともありますが「この馬に会いました」とか「コンサートでこんなことがあって」という内容がメインです。がんの仲間で作っているLINEグループの中でも、「〇〇に行った」という報告がマウントのように捉えられないように気を付けています。


――Tさんにとって、旅行はどのような存在なのでしょう?


リフレッシュできたり、好きなものと触れ合えたりできることが旅行の魅力だと思います。なんとなく不安だから……、と旅行をためらっているのはもったいないです。悩んでいる人は、ぜひ思い切って行ってみてほしいと思います。一歩踏み出してしまえば、どうとでもなるし、いざ行ってみるともう楽しくて、体調を崩している暇なんてないと思いますよ。


私の次の夢は、フランスに行って凱旋門賞(毎年10月にパリロンシャン競馬場で行われる世界的に有名なレース)を息子と一緒に見ること。お金を貯めて、ぜひ実現したいと思っています。

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この記事の監修者

佐藤 太郎(さとう たろう) 先生
大阪大学医学部附属病院 がんゲノム医療センター 准教授
監修者の写真

1993年弘前大学医学部卒業。内科医、米国での研究留学を経て、近畿大学腫瘍内科へ。2011年より大阪大学大学院医学系研究科に在籍。2023年4月より現職。胃がん、大腸がんなどの消化器疾患の抗がん剤治療や緩和ケア、がんゲノム医療を中心に診療を行っている。

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