【プロフィール】
埼玉県在住。夫と子ども2人(7歳と4歳)の4人暮らし。
下のお子さんの産休・育休中だった2018年3月(当時39歳)にステージ4の胃がんと診断され、その後、抗がん剤治療と胃の全摘手術を経て、現在(2022年)も闘病中。
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抗がん剤治療を開始した当時、お子さんはまだ3歳と1歳です。「治療を開始したころは容姿の変化を気にしている余裕はなかった」と語るYさんに、抗がん剤治療とともに変化する外見に対する気持ちの変化や実践していたケア方法を教えてもらいました。
治療開始から3カ月経過した頃に顔色に変化
ーー治療や副作用についての流れを教えてください。
がんが見つかったときはステージ4で、告知を受けてからすぐに抗がん剤治療を開始しました。最初の治療では『色素沈着』という副作用があって、顔色の悪さやシミができてきましたね。そのときに二枚爪にもなりました。
ただ、命あってのことだよねと思っていたため、治療を開始したころは容姿の変化を気にしている余裕はありませんでした。
ーー抗がん剤治療で起きた外見の変化に関するお話を聞かせてください。顔色の悪さやシミはどのタイミングで出始めて、どのように変化していきましたか?
薬を飲み始めて3カ月ぐらいたってから変化が出始めましたね。内側からにじみ出るシミみたいな感じで、シミは徐々に変化していきました。顔色の変化はある日突然という感じではないですけど、変化が出始めてから変わっていくスピードは早かったです。どんどん日焼けしていくような感じでした。
ーー顔色の変化やシミができたことで気持ちに変化はありましたか?
実際に変化が起き始めたときは、あぁ副作用がきたなと事実を受け止めただけでした。ただ、色が黒くなったときはつらかったです。その頃に友人と撮った写真を見返すと、やっぱり私だけ顔が黒いので自分が切なくなりました。
ーー顔色の変化自体は受け止めつつも、後で見返すというのはつらいですよね。周囲の人とコミュニケーションをとるときに顔色の変化が原因の悩みはありましたか?
人と会うときに、この人急に黒くなったなと思われるのが嫌でしたね。なので、友人と会うときは「副作用で顔色が悪くてごめんよ」のような前置きをしていました。相手も気になるだろうなというくらい色が変わっていたので、一言伝えておかないと居心地が悪かったです。
子供に服を着させるときに自分の爪が引っかかる
ーー冒頭で治療によって二枚爪になったというお話がありましたが、具体的にどのように変化しましたか?
爪の変化を感じたのは色素沈着より先で、徐々に柔らかくなっていきました。その後、二枚爪でペラペラになって、刃物のような薄い爪になってしまいました。
そのせいで、子供に服を着させるときに子供の肌に自分の爪が引っかかってしまうので、子供に「痛い」と言われることがありました。
ーーそんなこともあったのですね。爪ケアに関して情報収集はしましたか?
通院していた病院で爪ケアのサロンがあることをポスターで見て知ったので参加しました。
ーーそのサロンではどのようなお話があったのでしょう?
マニキュアを塗って爪の色を良くしようという感じの内容で、治療の副作用で爪の色が悪くなってしまう人のためのサロンでしたね。そのときは、除光液を使うと爪に悪影響を与えるので、自然に落ちるご粉ネイルの紹介をしていました。
私の場合は、爪の根元にオイルを塗って除光液が必要ないコーティング剤を塗ったりしていましたよ。
「がん治療中の特別な技術があるなら知りたいと思って」
ーー外見の変化自体は事実として受け止められた一方で、人と会うときには事前に顔色が悪いことを伝えておかなければ居心地が悪かったというお話を伺いました。外見のケアについて相談できる場所はありますか?
あったとは思いますが、活用しづらかったですね。通院していた病院では、スキンケアや爪のケア方法などを紹介してくれるサロンが毎週あることをポスターで見て知りましたが、通院のタイミングと合わなかったので1回だけしか利用しませんでした。
抗がん剤の点滴は3週間に1回やっていて、点滴の時間も1時間や4時間ぐらいやっていたので、その間に外見のケア担当の人が治療室を回ってくれたらいいのになと思っていました。
ーー外見のケアに関する情報はどのような方法で収集していますか?
ウェブを使って自分で調べていました。その中で、ある有名人のブログを読んで、がん治療中の人向けのメイクに関するイベントの情報を見つけて参加したことはあります。
ーーそのメイクイベントに参加した理由やイベントの内容を教えてください。
それまでメイクは我流でやっているものだけでしたが、がん治療中の特別な技術があるなら知りたいと思って参加しました。あと、治療中でもたまには銀座とか行きたいなと前向きな気持ちもありました。
イベントでは10人くらい集まり、講師の方から方法を教えてもらいながらメイクをしました。そこで強力なコンシーラーがあることを知れたことは良かったですね。
化粧品を使い分けてかゆみ対策
ーー参加したことでメイクに変化はありましたか?
シミを隠したいような相手と会うようなこともないので、イベントに参加した後もメイク自体に変化はありませんでした。ただ、イベントに参加した後にコンシーラーを買いましたが、買っただけで満足という感じでお守りとして持っています。
ーーその他にメイクで工夫したことや、効果を実感したことはありますか?
抗がん剤を点滴する前の吐き気を止めるための点滴の影響で、翌日顔がむくんだり、2〜3日顔が赤くなっていたんですよね。なので、何とかあらがおうと思って緑色のコントロールカラーを使っていました。
あと、治療を始めてから敏感肌になって、ちょっとヒリつくなとか、ちょっとかゆいなという感じがあったので、スキンケア用の化粧品を優しいものに変えましたね。肌の調子が悪くないときは今まで使っていた化粧品を使ったりしていたのですが、日によって今日は敏感肌だから敏感肌用を使うという感じで使い分けていました。肌の状態が変わったわけではありませんが、化粧品を使い分けるようにしたのでかゆみは出ませんでしたね。
投薬での通院の日はテンションを上げるためにちゃんとしたメイクや格好を
ーーメイクや爪のケア以外にも工夫されていることはありますか?
外見とは直接関係ありませんが、最初の治療の影響で手のしびれがひどく、直接物に触れなくて、24時間手袋をしていました。普段は白い綿の手袋を着けて、外出するときはおしゃれのためにガーデニング手袋を着けていましたね。ぴったりした手袋で柄(がら)のあるものはあんまりないんですよ。
ーーそんなところにも工夫を。では、反対にケアしきれなかった外見の変化はありましたか?
顔色の変化に対しては美白化粧水を使ったとしても対処できなさそうと感じたので、顔色の変化を止めるということに関しては対処しませんでした。治療の影響で敏感肌にもなっていたので、あまり化粧水も美白とか変わったものも使いたくなかった経緯もあります。
ーー外見の変化には対処できる変化と対処できない変化があるのですね。最後に、治療中の外見のケアとはどのようなものでしょうか?
『病人であることを忘れて心穏やかにいれる』『気持ちを前向きにさせて治療や副作用を受け入れられる状態になる』といったもので、できる範囲で取り入れてるっていう感じですね。具体的には、治療(投薬での通院)のときはテンションを上げるためにちゃんとしたメイクや格好をして、今日がんばるぞ!という気持ちを作っていました。