胃がんの手術後、ダンピング症候群の症状に悩まされる方も少なくありません。ダンピング症候群には、食事中や食事のすぐあとに起こる「早期ダンピング症候群」と、約2〜3時間後に起こる「後期ダンピング症候群」があります。この記事では、早期ダンピング症候群についてお話しします。
Q.ダンピングとはなんでしょうか?
A.胃は、食べたものを細かくし、小腸で消化吸収しやすいように胃液を混ぜ合わせ、一時的にためてから徐々に小腸に送り込む役割を担っています。これにより小腸に負担がかからず、小腸での消化と吸収がスムーズに行われます。
胃の切除を行うと、こうした胃の働きが弱まり、食べたものがそのまま急速に小腸に流れ込みます。
このことで起こるさまざまな症状を総称して「ダンピング症候群」といいます。とくに、胃をすべて摘出した場合や胃の幽門部(出口側)の切除を行った場合に起こりやすいといわれています。
「ダンピング」とは、ダンプカーが土砂などの荷物を“どさっと落とす”ことを表す言葉で、そこから名前がついているといわれています。
Q.早期ダンピング症候群には、どんな症状があるのでしょうか?
A.早期ダンピング症候群は食事中、または食事のすぐあと(30分程度)に起こるさまざまな症状のことです。大きく分けて全身に表れる症状と腹部に表れる症状があります。
全身に表れる症状
- 冷や汗
- 動悸(どうき)
- しびれ
- 眠気
- だるさ
- 全身熱感
- めまい
- 胸苦しさ
- 頭痛
- 貧血
- 顔の紅潮または蒼白 など
腹部に表れる症状
- 腹痛、腹部の不快感
- 下痢
- 腹部膨満感(おなかが張って苦しい状態)
- 吐き気
- おう吐 など
表れる症状や感じ方の度合いは手術の内容や体質などによっても異なってきます。
Q.早期ダンピング症候群はなぜ起きるのでしょうか?
A.症状が起こる原因については、全身症状と腹部症状でそれぞれ異なります。
全身症状が起こる理由
食べたもので未消化のままのものや、浸透圧の高いもの*が急速に小腸に送られると、小腸では消化を助けようとして消化管ホルモンなどが過剰に分泌され、全身の毛細血管に血液が移動し、偏った状態になります。
その結果、全身をめぐる血液が一時的に不足し、脳の血流量が減ったり血圧が下がったりすることで冷や汗や動悸などの全身症状が起こります。普段から低血圧の人はダンピング症候群が起こりやすい傾向にあります。
* 炭水化物など糖質を多く含む食べ物で、腸での消化・吸収に適した硬さや濃さになっていない状態のもの

腹部症状が起こる理由
食べたもので未消化のままのものや、浸透圧の高いものが急速に小腸に送られることに起因するのは全身症状の場合と同じです。
腸では消化を助けようとして消化酵素や腸液が過剰に分泌されたり、腸内の浸透圧を戻そうとして、腸の毛細血管にある水分が腸管内に移動したりすることで、腸が水ぶくれ状態になります。
その結果、腹部膨満感や腹痛などさまざまな腹部症状が起こります。また食べたものがしっかりと消化されずに腸を通り過ぎることで、下痢を起こします。

後期ダンピング症候群への影響
また、適量以上の炭水化物が一度に小腸に入ると、分解されたブドウ糖が急速に血液の中に吸収されることで高血糖状態になってしまい、これが後期ダンピング症候群の症状へとつながっていくので注意が必要です。
Q.早期ダンピング症候群の症状を防ぐことはできますか?
A.食事の取り方や内容を工夫してみましょう。
1回あたりの食事量を減らし、間食も含めて食事の回数を多くする
口を胃のかわりにするイメージで、食べ物はよくかみ、唾液と混ぜ合わせて口の中でかゆ状にしてから飲み込む(1口30回、1食30分くらいを目標に)
食事と一緒に水やお茶などの水分を摂りすぎないように気をつける(胃から小腸への移動時間が早くならないように)
糖分や炭水化物を控えめにする(代わりにタンパク質を多く摂るような意識で)
新しい胃腸の状態に慣れるまで、数カ月~1年ほどかかることもあります。その間、ダンピングの症状を恐れて食事がおっくうに感じることもあるかもしれません。症状が出るのをを防ぐには、自分に合った食事の仕方を見つけることが大切です。焦らず、ゆっくり食べることを心がけましょう。
Q.早期ダンピング症候群の症状が起きてしまったらどのように対処すればいいですか?
A.症状が落ち着くまでしばらく横になって休んでください。
また薬で症状を和らげることもできるため、医師に相談してみましょう。
この記事では早期ダンピング症候群についてご紹介しましたが、症状の表れ方には個人差もあり、後期ダンピング症候群との区別がつかない場合もあることも覚えておきましょう。


