がんの治療を行うなかで、食欲不振に悩む方は少なくありません。体のためにもしっかり食べなければと思っても、食欲がわかず、思うように食べられないことに不安を感じてしまうこともあるでしょう。そこで今回は、がん治療で食欲が出ないときの原因と対処法についてお話しします。
Q.なぜ食欲不振になるのでしょうか?
A.食欲がなくなる原因としてはさまざまなことが考えられ、さらに複数の原因が関係している場合もあります。
主な原因
- がんそのものによるもの
- がん悪液質*によるもの
- 治療による副作用[手術や抗がん剤治療(などの薬物療法)、放射線治療など]
- 消化・吸収機能の低下
- かむことや飲み込むことに関する摂食(せっしょく)・嚥下(えんげ)障害
- 体調不良[発熱、痛み、不眠、倦怠(けんたい)感など]
- 痛みやストレスなどの心理的な影響によるもの
- 環境の変化
* がん悪液質(あくえきしつ)とは?
体重減少と食欲の低下を伴うがんの合併症で、がん細胞がつくり出す「サイトカイン」という物質が体に影響を与えることで引き起こされます。このサイトカインによって食欲が抑えられてしまい、治療の効果やQOL(Quality of life:生活の質)、さらには生存率にまで影響を及ぼすと言われています。
がん悪液質発生のメカニズムはいまだ不明な点が多く、従来の栄養サポート(適切な栄養管理)では改善が難しいため、早期治療が必要となります。
Q.食欲不振を改善することはできますか?
A.食欲が低下する原因を把握し、緩和のための対策を取り入れることが必要です。
対策の例
治療による副作用の場合(手術や抗がん剤治療(などの薬物療法)、放射線治療など)
- 治療のスケジュールからある程度予測して食事の工夫をする
(例:抗がん剤治療や放射線治療後1〜2週間は食欲が低下しやすいため、この期間は消化に良いものを少量ずつ食べるようにする など)
痛みやストレスなどの心理的な影響によるものの場合
- 気分転換をする。また抗うつ剤などの処方で改善されることもあるため主治医に相談する
かむことや飲み込むことに関する摂食・嚥下障害の場合
- 口腔(こうくう)ケアや唾液の分泌を促す舌のストレッチを行う
- 食べやすいスプーンに変えるなど、食器を工夫する
治療が必要になる場合もあるため、食欲不振が続く場合は主治医や看護師に相談してみましょう。
Q.食欲がないときでも、毎日3食食べたほうがいいですか?
A.体力を維持するため、また感染症などを防ぐためにも、バランスの良い食事を毎日取ることは大切です。しかし、食欲がない場合は無理に1日3食規則正しく食べる必要はありません。「がんばって食べよう」と思うことがストレスになり、それがまた食欲不振の原因となってしまうこともあります。
食べられそうと思ったときに、少しずつ数回に分けていつでも食べられるように、小分けになっているものを用意しておくと便利です。
食べやすいものの例
- ゼリーなど、のどごしが良いもの
- 具沢山のみそ汁やスープなどの汁物
- 茶わん蒸しや煮込んだうどんなどやわらかいもの
- アイスなどの冷たいもの
- カレーライスや酢の物など香辛料や酸味などで食欲を刺激するもの
- 果物や野菜を使ったスムージー
栄養価の高いものを食べることが理想ですが、難しい場合や栄養バランスが気になるときは栄養補助食品やサプリメントを活用するのもよいでしょう。取り入れる場合は、治療に影響がないか主治医や管理栄養士に事前に相談してからにしましょう。
Q.味が感じられず食欲がわきません。工夫できることはありますか?
A.抗がん剤治療(などの薬物療法)や放射線治療によって、舌の表面にあり味を認識する味細胞(みさいぼう)や唾液腺(だえきせん)が影響を受けたり、口の中が乾燥して唾液の分泌が少なくなったりすると味覚の変化が起きることがあります。また、薬の影響で苦味や金属の味を感じることもあります。
ほかにも、抗がん剤治療(などの薬物療法)や放射線治療で鼻の奥にあるにおいを感じる細胞に影響が及ぶと、においを感じにくくなったり敏感になったりすることもあります。
味覚・嗅覚の変化は、多くの場合、治療終了後に自然と回復していきますが、気になる場合は以下のような対策を取り入れてみましょう。
対策の例
- 口腔ケアをする
- 1日数回(食後や就寝前など)、毛の柔らかい歯ブラシで歯みがきをする
- こまめにうがいをする
- 口の中が乾燥しないようにする
- 水で濡らしたガーゼで拭ったり、市販の口腔保湿剤で保湿する
- よくかんで食べることで、唾液の分泌を促す
- 味が感じにくい場合は、調味料などではっきりした味付けにしてみたり、人肌程度に温めたりして食べる
- においが気になる場合は、常温または冷やした状態で食べる
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