胃を切除する手術をしたあと、食欲不振に悩む方も少なくないでしょう。そこで今回は、胃の切除後に食欲不振となる原因とその対処法についてお話しします。
Q.胃の切除後、なぜ食欲不振になるのでしょうか?
A.食欲不振とは、何も食べていないのに食欲がわかない状態を指します。胃を切除したあと食欲がなくなる原因としては以下のようなことが考えられます。
胃のはたらきの低下
胃の切除をしたことで容積が小さくなる、または胃をすべて失ってしまうと、“食べ物をためて消化する”という胃のはたらきが低下します。
そのため、少し食べただけでもすぐにおなかがいっぱいになってしまったり、消化が進まないことで空腹感が生まれにくくなったりします。また、もたれやつかえ、腹部の膨張感、吐き気やおう吐などを伴うこともあります。
これらの症状を小胃症状といい、胃の切除範囲が大きいほど起こりやすくなります。また過食(大量に食べてしまうこと)や早食いなど、食事の取り方によっても症状が表れやすくなることもあります。
食欲を促すホルモンの減少
胃から分泌される「グレリン」というホルモン*が関係している場合があります。
グレリンは空腹の合図を脳に伝えることで食欲を促進させたり、体重増加に関与したりといったはたらきをしています。つまり、エネルギー代謝の調節に重要な役割を担う“食欲促進ホルモン”なのです。
胃を切除することで、このグレリンの分泌が減り、食欲の低下につながります。
* からだの機能がスムーズにはたらくための調整をする物質で、ホルモンの種類によって異なるはたらきを持ち、全身のさまざまな部位で作られる。必要なときに必要な量が作られ(分泌され)、少なすぎるとからだの機能がはたらかなくなり、多すぎると体に障害をもたらす。
そのほか
また上記以外にも、抗がん剤(などの薬物)や放射線などによる治療や、ストレスなどの心理的な影響などが食欲不振の原因となることもあります。
Q.食欲不振を改善することはできますか?
A.切除した胃がもとの大きさに戻ることはありませんが、多くの場合は手術後3カ月〜1年くらい経つと徐々に体も適応し、食べる訓練をすることで食事量が回復していきます。
以下を参考に毎日の食事の取り方に気をつけながら、食事量を回復させていきましょう。
食事の取り方で気をつけること
- 少量を複数回に分けて食べる
- 消化しにくい食材(脂肪分や繊維質が多いもの)はできるだけ避ける
- 熱すぎるものや、冷たすぎるものはできるだけ避ける
- やわらかいものや、消化の良い食材を選ぶ
- よくかんでから飲み込む
食欲不振についてはさまざまな研究が行われていますが、現状では有効な治療法はまだ確立されていません。そのため、食欲不振の原因がグレリンの場合は主治医と相談しながら食事の取り方を工夫する必要があります。
場合によってはステロイドの薬や、「六君子湯(りっくんしとう)」などの漢方薬を取り入れることもあります。
もし、食事の取り方に気をつけていても食欲不振の状態が長く続く、おう吐してしまうなど頻繁に具合が悪くなる場合は、腸の通過障害などが起きている可能性もあります。そのような場合は主治医に相談してみましょう。
Q.食欲が戻るまで、無理して食べようとしなくてもいいでしょうか?
A.手術後は、体の変化に不安やストレスを感じることも多く、つらい症状が出ることを恐れて食事に対して消極的な気持ちになってしまう人も少なくありません。
しかし、胃を切除したあとの体の回復のため、そして「食べられなくなる」ことで起こる体重減少などの後遺症対策のためにも、食事を取ることはとても大切なことです。
食欲がないのに食べようとするのはつらい行為でしょうが、手術後の早い段階から意識的に食事と向き合って胃や小腸を順応させることが、食欲の回復に向けての近道となります。
体が慣れるまではおなかのリハビリ期間と考え、食事の彩りを工夫してみたりウォーキングなどの運動でリフレッシュするなど、少しずつでも食べられそうなやり方を探しながら、自分の体のペースに合わせて食事に慣れていきましょう。
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