乳がんは、女性の罹患者が多いがんのひとつです。どんな特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
乳がんとは
「乳がん」は、乳房にある乳腺組織[乳腺(にゅうせん)ともいう]から主に発生するがん*1です。その多くは、乳管や小葉(しょうよう)から発生しますが、まれに乳腺以外の組織から発生することもあります。
乳がんは女性がかかるがんのなかでもっとも多く、比較的若い世代で多く発生することも特徴です。
*1 遺伝子変異によって生まれた「異常な細胞」が無秩序に増殖し、別の臓器に移るなどして、生命に重大な影響を与えるもの。悪性腫瘍(しゅよう)。
乳がんの種類
乳がんは、乳管や小葉の壁を越えてがんが広がっている[浸潤(しんじゅん)がある]かどうかによって大きくふたつに分けられます。
非浸潤(ひしんじゅん)がん
がん細胞が乳管・小葉の内部にとどまっているものを「非浸潤(ひしんじゅん)がん」といいます。

非浸潤がんは、がんになる前の「前がん病変」とも呼ばれ、適切な治療を行えば転移することはめったになく、再発の可能性も極めて低いといえます。しかし非浸潤がんであったとしても、がんが広がっている範囲が大きい場合はがんを取り除くために乳房をすべて切除することもあります。
浸潤(しんじゅん)がん
がん細胞が乳管・小葉の壁を越えて外の組織に広がっているものを「浸潤(しんじゅん)がん」といいます。

がん細胞は脇の下の「腋窩(えきか)リンパ節」や鎖骨の上にある「鎖骨上リンパ節」など、まわりのリンパ節へ転移することもあります。
さらに、リンパ管や血管を通じて広がり、骨、肺、脳、肝臓などの臓器に転移することもあります。
乳がんの進行
がんの進行度合いは「ステージ(病期)」で分類され、乳がんの場合は進行度が低い順に、ステージ0(0期)からステージ4(Ⅳ期)までの段階があります。
乳がんのステージは、乳房におけるがん細胞の広がり具合やリンパ節への転移の有無、遠隔転移(骨や肺など別の臓器への転移)の有無などによって決まります。
ステージ0が非浸潤がん、それ以外が浸潤がんにあたります。
乳がんの発生に関係するものとは?
乳がんの発生には「エストロゲン」などの女性ホルモンが関係しています。
乳がんの70〜80%は、エストロゲンの影響を受けて増殖するタイプのホルモン受容体陽性乳がんと考えられています。
家族や近しい親族のなかに乳がん経験者がいる場合、発症のリスクが高まると考えられています。
自覚症状はどんなものがある?
乳がんは、早期で見つかることが多く、適切な治療を行えば転移や再発の可能性は低いです。乳房の状態がふだんと違うことに気づいたときには、なるべく早いうちに医療機関で診察を受けることが大切です。
乳がんの代表的な症状について見ていきましょう。
しこり
乳がんがしこりとして触ってわかることがあります。乳房のしこりは、そのすべてが乳がんではなく良性の病変であることも多いですが、手で触っただけでは良性か悪性(乳がん)かを判断することはできません。
また、妊娠中や授乳中は乳腺が発達するため、しこりがあるように感じたり、乳房が大きくなってしこりを見つけづらくなったりすることがあります。
皮膚の陥没、変形、腫れ
乳房の皮膚にえくぼのような凹みが現れることがあります。また、左右の乳房の形が非対称になる、部分的に皮膚の色が変化する、皮膚の腫れやただれといった症状が表れることがあります。
乳頭からの分泌物
乳頭から液状のものが出てくることがあります。授乳期でなくとも分泌物が出ることは珍しいことではありませんが、単孔性(乳頭部のひとつの穴から分泌が起こること)の分泌や血の混じった分泌物が出る場合には、乳がんが隠れている可能性があります。
乳頭や乳輪のただれ
乳頭や乳輪に湿疹やただれのような症状が現れ、出血することもあります。