肺がんは、男性、女性ともにかかる人が多く、特に男性の罹患者の多いがんです。発生部位や症状、がんのタイプ、治療の選択肢もさまざまです。肺がんとはどんな病気なのか、見ていきましょう。
肺がんとは
肺がんは広義には「原発性肺がん」と「転移性肺がん」に分けられます。原発性肺がんとは肺から発生したがんであり、転移性肺がんとはほかの臓器にはじめにがんが発生して、それが肺に転移したものです。転移性肺がんは、原発臓器のがんの特徴を引き継ぐことが多く、治療も原発臓器に則って行われます。
ここでは基本的に原発性肺がんについて解説しますので、「肺がん」は原発性肺がんを指すものとします。
肺がんは、肺にできるがん*1の総称で、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因によって「がん化」したものです。肺がんにかかる人は40代後半から次第に増え、年齢が上がるほど罹患率も高くなる傾向にあります。
早期には自覚症状がないことが多く、進行するまで症状が出ないこともあります。
肺は全身から血液が集まり、ガス(二酸化炭素と酸素)の交換が行われる場です。また免疫機能を担うリンパ管も張りめぐらされており、がん細胞が血液やリンパの流れに乗って移動するため、ほかのがんよりも広がりやすく、転移しやすいのも特徴です。
*1 遺伝子変異によって生まれた「異常な細胞」が無秩序に増殖し、別の臓器に移るなどして、生命に重大な影響を与えるもの。悪性腫瘍(しゅよう)。
肺がんのタイプ
肺がんには、さまざまな組織型(がんのタイプ)があり、それぞれ異なった性質を持ちます。特に、「小細胞がん」とそれ以外の組織型で大きく性質が異なるため、治療の進め方も「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」で大きく分けられます。
肺がん全体のおよそ15%にあたる「小細胞肺がん」は、がん細胞の増殖や転移のスピードといった進行が速く、悪性度が高いのが特徴です。また、喫煙との関係が深いとされています。非小細胞肺がんと比べ薬物療法や放射線治療が効きやすいという特徴もあります。
「非小細胞肺がん」は、肺がん全体の80~90%ほどで、過半数を占める「腺(せん)がん」「扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」「大細胞がん」の3つの組織型にさらに分けられます*2。3つの中でも大細胞がんは比較的進行が速いとされています。扁平上皮がんは喫煙により発症することが多く、腺がんは非喫煙者にもみられます。
*2 これらに含まれない希少がんもある
がんの発生部位によっても分けることができます。太い気管支が枝分かれしていく肺の中心部に発生する肺門型(中枢型)と、肺の奥の方に発生する肺野型(末梢型)とがあり、症状の傾向が異なります。
また、肺がんの進行度合いはステージ(病期)で表され、進行度が低いものからステージ1(I期)〜ステージ4(Ⅳ期)の大きく4つに分けられます。
肺がんの症状について
肺がんの多くは、早期のうちはほとんど症状が見られず、症状が出てきたときにはすでに進行してしまっている場合も少なくありません。
主な症状として、咳や痰(たん)、血痰(けったん:血の混じった痰)、胸の痛みや呼吸困難などが挙げられますが、いずれもさまざまな呼吸器疾患に共通するものであり、肺がん特有の症状ではありません。「この症状が出たら肺がん」という症状はないため、ほかの呼吸器疾患との区別がつきにくいこともあるのです。
肺がんの症状の中でも最も多いのが咳と痰です。そのため、咳や痰が2週間以上続く、血痰が出る場合や、発熱が5日以上続く、しだいに症状がひどくなってきた場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
また、肺門型は進行に伴って呼吸器症状が現れやすいですが、肺野型は呼吸器症状が出にくいため、無症状で健診のときに見つかることや、あるいは転移に伴う症状[たとえば、脳転移することで痙攣(けいれん)や麻痺(まひ)、意識障害などをきたす]が先行することもあります。
進行すると出やすい症状
- 咳(多いもののひとつ)
- 痰(多いもののひとつ)
- 血痰
- 胸の痛み
- 息苦しさ
- 動悸
- 呼吸困難
- 発熱
転移すると出やすい症状
- 頭痛
- ふらつき
- 背中や肩の痛み
- 声のかすれ
- 顔のむくみ
など
肺門部にがんが発生したときに出やすい症状
- 咳
- 痰
- 血痰
- 呼吸時にヒューヒュー・ゼーゼー音がする
など