肺は、呼吸器の一部であり、酸素を体内に取り入れ、不要になった二酸化炭素を外に出す役割をしています。そのしくみとはたらきについて見ていきましょう。
肺のしくみ
「呼吸器」は「上気道(じょうきどう)」「下気道(かきどう)」と「肺」に大きく分けられます。呼吸によって鼻や口から取り込まれた空気は上気道、下気道を通って肺に行き渡り、肺は酸素と二酸化炭素を交換する役割をしています。
心臓を挟んで左右にひとつずつある肺は、「胸壁」と「横隔膜(おうかくまく)」に囲まれた「胸腔」にあります。
また、空気の通り道である気管は、左右ふたつに「主気管支」として分かれ、肺の入り口のほうを「肺門(はいもん)」部、気管支が細かく分かれていく肺の奥のほうを「肺野(はいや)」部といいます。
気管支は細かく枝分かれしていてその末端には「肺胞(はいほう)」という小さな袋状のものがブドウの房(ふさ)のように連なっています。
肺の区分のしかた①
一般的に、右の肺が左よりわずかに大きく(比率として10:9ほど)、これは心臓が体の中心より左寄りにあるためです。肺の表面には「裂(れつ)」と呼ばれる溝があり、この裂によって右の肺は上葉(じょうよう)・中葉(ちゅうよう)・下葉(かよう)の3つに、左の肺は上葉・下葉のふたつに分かれています。
肺がんの標準的な手術として、この肺葉を切り取る「肺葉切除術」が行われています。
肺の区分のしかた②
さらに肺を分ける単位として「区域」があり、右の肺は10の区域、左の肺は8の区域*に分けられます。
早期の肺がんの場合、この区域ごとに病巣(びょうそう)を取り除く「区域切除」が行われることがあります。
* 左の肺は第1、第2区域を合わせてひとつ分の区域として数える。また、第7区域は存在しない。
肺のはたらき
先ほども触れたように、肺の主な役割は、酸素と二酸化炭素の交換(「ガス交換」といいます)であり、私たちが生きていく上で欠かすことができない重要なはたらきのひとつです。
呼吸により体の中へと入った酸素は、気管や気管支を通り、末端である肺胞へとたどり着きます。中に入ってきた酸素は、肺胞の内側にある毛細血管から体内へと取り込まれ、同時に不要となった二酸化炭素が肺胞へと移動し、呼気(鼻や口から吐く息)として体の外へ排出されます。
ブドウの房のように連なっている肺胞は、直径0.1mmほどの大きさで、左右の肺におよそ3~5億個あります。すべての肺胞の表面積を合わせると、テニスコート1面分(130㎡)にも達します。
コラム:呼吸のしくみとは
肺は、息を吸ったり吐いたりするたびに広がったり縮んだりすることで、大きさ・容量が変化します。しかし、肺そのものには運動能力はありません。
実際に、私たちが空気を吸ったり吐いたりする「呼吸運動」を司っているのは、肺のすぐそばにある「横隔膜」と「肋間筋(ろっかんきん)」です。これらが動くことにより、肺に空気を取り入れたり吐き出したりしています。
息を吸うとき
横隔膜と肋間筋が縮む
↓
胸腔が広がり、肺が引き伸ばされ膨らむことで、空気が入る
息を吐くとき
横隔膜や肋間筋がゆるむ
↓
胸腔が狭くなり、肺が自然に縮まる際に、空気を押し出す
睡眠時など安静に過ごしている際には横隔膜や肋間筋がはたらき、体を動かしたり大きく息を吸い込んだりした際には、横隔膜や肋間筋に加え、首にある呼吸をサポートする筋肉もはたらいています。