企画協力:グンゼ株式会社
ストーマをつくることが決まってから不安なことがたくさんあるかと思いますが、肌着に関することもそのひとつではないでしょうか。わからないことも多いストーマでの生活。肌着に関してもあらかじめどんなものや対策があるのか知っておくことで、より快適な暮らしをスタートさせることができます。
今回は、ストーマを保有する人(オストメイト)の肌着選びのポイントについて、肌着の専門家に聞きました。肌着に関するアンケート結果をもとに、リアルな悩みとその対策についても考えていきます。
お話を聞いた人
グンゼ株式会社 研究開発部 マネージャー 栗原健司さん
Q.オストメイトになったら、これまでの肌着は使えますか?
A.開腹手術(ストーマ造設を含む)を受けたことのある患者さんを対象としたアンケートによると、開腹手術後に一般の(手術前に使用していた)下着を使用した際に悩んだこととして「傷あとにすれて痛む」「傷あとがかゆくなる」「傷あとにすれて、治りが遅いように感じる」「締め付けがきつい(圧迫する)」などが上位に挙がっています。
出典:グンゼ株式会社「腹部手術後の下着に関する調査」2023年実施 回答数:185人(複数回答)
実際はオストメイトになっても、これまでの肌着を使用することができます。しかし、ストーマ袋が肌に長時間密着したりすれたりすると、痛みやかぶれなどの肌トラブルにつながることも。肌着には装具と肌が直接触れることを防ぎ、肌の健康を守る大切な役割があるのです。
一般的な下着は傷あとやストーマの設置を前提としたものではないため、装着していて不具合や不快感がある場合には、早めに主治医や担当の看護師など医療従事者に相談することをおすすめしています。
Q.これって自分だけの悩み? ほかの人はどんなことに悩んでますか?
A.ストーマを保有してからすぐは、悩みや困ったことに直面することも少なくありません。「こんなことに悩んでいるのは自分だけでないか…」と抱え込んでしまう方もいるのではないでしょうか。
開腹手術(ストーマ造設を含む)を受けたことのある患者さんに聞いたアンケートによると、術後の下着(パンツ)選びで悩んだ経験がある方は、なんと100%という結果に。多くの方が自分に合った肌着や着用スタイルとなかなか巡り合えないことに悩みを抱えていることがうかがえます。
出典:グンゼ株式会社「腹部手術後の下着に関する調査」2023年実施 回答数:200人
最初の質問で触れたアンケート結果からもわかるように、具体的な肌着の悩みには「歩くとストーマ装具が太ももにすれる」「装具をパンツの中にしまうと、パンツのゴムが装具を押さえつけてしまう」「装具の締め付けが気になり大きめサイズのパンツを着用すると、全体的にゆるくなってしまう」などがありました。
Q.肌着を選ぶときのポイントを教えてください
A.肌着選びにおいてもっとも大切なのは、肌トラブルを“未然に”防ぐことです。
大きめのサイズは一見ラクに見えますが、生地と肌の間にすき間ができるため、生地が肌にすれて刺激になることがあります。この点、伸縮性の高い素材や表面が滑らかな素材を選べば、肌にぴったりとフィットするサイズ感で動きやすく、肌への摩擦も少なくすみます。
開腹手術(ストーマ造設を含む)を受けたことのある患者さんを対象に行ったアンケートによると、開腹手術後に使用する下着に関して「締め付けがないこと」「縫い目がないこと」「おなか全体を覆ってくれること」「肌触りが柔らかいこと」「蒸れないこと」などを希望する声が多いことがわかりました。
出典:グンゼ株式会社「腹部手術後の下着に関する調査」2023年実施 回答:200人(複数回答)
近年では、これらの声を反映したオストメイト専用の肌着も市販されています。いざというときに焦ることのないよう、手術の前からどのような製品があるのかを調べたり、前もって看護師に相談したりしておくことをおすすめします。
オストメイト専用の肌着
Q.素材は綿100%を選んだ方がいいのでしょうか?
A.綿100%素材の肌着が自分の肌に合っていて、実際に快適に過ごせているのであれば、それは良い選択だと思います。しかし「綿100%=肌にやさしい」というイメージだけで綿100%の肌着を選ぶことはおすすめしません。
綿100%の肌着は、吸水性に優れ、ムレにくく肌触りが良いのが特徴ですが、洗濯を繰り返すことで硬くなりますし、また毛羽立ちが起こりやすいため、それらによって、肌を刺激してしまうことがあるからです。
一方で、綿にポリウレタンなどを混ぜ込んだ「化学繊維」の中にも、柔らかくシワになりにくい、伸縮性が高く強いなどの特徴がある素材があります。ムレにくさや、伸縮性、柔らかさ、などのバランスを考えて、綿混素材を選ぶ方も多くいます。
オストメイトにとって肌着は、肌トラブルを未然に防ぎ、より快適な毎日を送るための大切な要素のひとつです。繊維の特徴を知り、さまざまなものを試しながら自分に合った肌着を見つけてみてください。