口の乾燥は多くのがん患者さんを悩ませる症状のひとつです。口が乾燥するといつもの食事が取りにくくなる、ぐっすり眠れなくなるなど、体力が低下する原因になることも。ここでは、がんの治療中に口の乾燥が起こりやすい理由とその対策方法についてお話しします。
Q.がんの治療中に口の中が乾燥しやすいのはどうしてですか?
A.がんの治療中は唾液の量が減り、口が乾燥しやすくなります。こうした症状の多くは、抗がん剤や頭頸部(頭・首・のどなど)への放射線治療の影響で、唾液をつくる細胞や唾液腺(唾液が出るところ)がダメージを受けたり、治療で使う痛み止めや抗うつ薬・利尿薬などの副作用によるものです。
口が乾燥すると、ネバネバ・パサパサして不快なだけでなく、食事が取りにくくなったり、睡眠の質が低下したり、感染症にかかりやすくなったりするなどさまざまなトラブルにつながることがあります。
がんの治療が決まったら、治療前から予防のための口腔ケアとして、歯磨きとうがいをこまめに行いましょう。トラブルを感じたときはすみやかに医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
口が乾燥すると起こりやすい症状
- たくさん噛(か)んでも食事がまとまらず飲み込みにくい
- 味覚が変化する
- 会話がしづらい
- やけどをしたようなヒリヒリした感覚
- 義歯が装着しづらい・外れやすい
- むし歯になりやすい
Q.自宅でできる口の乾燥対策を教えてください
A.口の乾燥は、早い段階からのこまめなケアで症状をコントロールすることが可能です。
歯磨き・うがいに加え、デンタルミラー*などで毎日口の中を観察し、小さな変化にもすぐに気付くことができるようにしておきましょう。乾燥が悪化したり、いつもと違う症状があるときは迷わず医師に相談してください。口の乾燥を予防し口の中を衛生的に保つためには、次のようなことが効果的です。
* 口腔内を見るための小さな鏡。薬局やドラッグストア、100円均一ショップなどで購入できます。
口の乾燥を防ぐ工夫
- こまめな水分補給やうがい(1日4回以上を目安に)をする
- アルコールを含むうがい薬は刺激が強いので控える
- あめやガムを食べて唾液の分泌を促す
- 口の中を潤す口腔保湿剤(ジェルタイプやスプレータイプがある)を活用する
- 冬季は加湿器で室内の乾燥を防ぐ
なお、口の乾燥の治療では口腔保湿剤のほかにも、唾液腺を刺激して唾液を出す薬が処方されることがあります。
食事での工夫
- 口の中を傷つけやすい熱い食品・乾燥した食品・硬い食品・ 刺激が強い食品は避け、水分が多く軟らかい食品を選ぶ
- ごはんは軟らかめに炊くか、おかゆにする
- 煮る・蒸すなどの調理法は水分量が多くなりやすいのでおすすめ
- のどごしが良いデザート(ゼリー、プリン、ヨーグルトなど) を積極的にとり入れる
- 食べ物と飲み物(汁物)を交互に食べる