放射線治療中は、肌が赤くヒリヒリしたり乾燥したりするなどのトラブルが起こることがあります。そこで今回は、放射線治療中の肌トラブルの原因とケア方法に関するお悩みについて考えていきます。
Q.放射線を照射した部分がヒリヒリするのはなぜですか?
A.放射線治療中は、放射線を当てた部位の肌が日焼けしたときのように赤くヒリヒリしたり、乾燥してかゆみを感じたり、水ぶくれができたりするなどの「放射線皮膚炎」が起こることがあります。
「放射線皮膚炎」とは放射線の影響によって生じる皮膚の炎症で、体の外側から放射線を当てる際、病巣(びょうそう)に到達するまでに皮膚を通過するため、がん細胞だけでなく皮膚にも影響が及ぶことで起こります。
特に、首や耳の後ろ、乳房の下、肘関節やわきの下、外陰部などは、衣服とこすれるなど刺激を受けることが多く、皮膚炎が起こりやすい傾向にあります。
ただし、どのような症状が出るかは放射線を照射する部位や放射線の当て方によって異なり、個人差もあります。炎症をできるだけ起こさないように、そして悪化させないようにするため、日頃のケアなどの自己管理が重要になってきます。
Q.放射線治療中の肌にはどのようなケアが必要になりますか?
A.放射線治療を開始したら、皮膚炎の症状が出ていなくても照射部位に対して刺激となることは避け、清潔に保ち、しっかり保湿することが大切です。
刺激を避ける
- かゆくてもこすったり掻(か)いたりしない(かゆみが気になる場合は、シャーベット状になるまで溶かした保冷剤などで冷やす)
- 湿布や絆創膏(ばんそうこう)などは照射部位に貼らない
- ひげを剃る場合、カミソリは避け、電気シェーバーを使う
- カイロなどは照射部位に当てない
清潔にする
- 入浴やシャワーでは熱いお湯は避け、ぬるま湯にする
- 体を洗う際はナイロンタオルなどの使用は避け、石鹸やボディソープをよく泡立ててから手でなでるように洗う
- 体を拭くときはタオルで軽く押さえるようにする
- 放射線治療中は温泉やサウナ、岩盤浴、プールなどは避ける
保湿する
- 医師に処方してもらった保湿剤を使用する
- 自己判断で市販の化粧水やクリームをつけたりすることは避け、医師や看護師に相談する
Q.放射線治療による肌荒れや色素沈着はいつ治りますか?
A.個人差もありますが、放射線治療が終われば、1カ月ほどで炎症は落ち着いてきます。
しかし、放射線治療の後半になるにつれ皮膚炎が悪化することが多く、特に照射がすべて終了してからの1〜2週間は症状がひどく出る傾向にあるため、治療終了後も1カ月間くらいは治療中と同じケアを続けるようにしましょう。
また、皮膚の突っ張りや色素沈着などが残る場合もあります。もし気になる症状がある場合は、早めに医師や看護師に相談してください。
Q.陰部や肛門に照射していてお手洗いが憂鬱なのですが、どのようなことに気をつければいいでしょうか?
A.排せつ後は、こすらず押さえるように拭きましょう。また、温水洗浄便座やビデで洗浄する場合は、最も弱い水圧に設定してください。もしそれでもしみる場合は、ペットボトルや携帯洗浄機にぬるま湯を入れて、そっと洗い流すようにしましょう。
放射線皮膚炎を完全に防ぐことは難しいですが、日頃の工夫次第で症状の悪化を食い止めることは可能です。日常生活の中でできることから、意識して取り入れていきましょう。