がん患者さんが抱えやすい悩みのひとつに下痢があります。ここではがん患者さんが下痢になりやすい理由と主治医や看護師に相談した方がよいケース、生活の中でできる工夫についてお話しします。
Q.がんの治療を始めてから下痢に悩んでいます
A.下痢が続くと肛門のまわりに痛みや炎症が起きたり、栄養不足や脱水などの命に関わる状態になったりすることがあるので注意が必要です。また、下痢のために1日に何度もトイレに行ったり、外出が難しくなると心身のバランスを崩してしまうことも。下痢は症状を感じた時点で速やかに対処をしていくことが大切です。
がん患者さんの下痢には、次のような原因が考えられます。
下痢の主な原因
- がんの治療に用いる薬、痛み止めなど症状をやわらげる薬の副作用
- 抗生物質による腸内細菌のバランスの変化
- 腹部・骨盤内への放射線照射の影響
- 手術の影響(胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんなど)
- がんそのものによる消化機能の低下
- 細菌、ウイルスによる感染症によるもの
Q.医師に相談したほうがよい下痢の目安はありますか?
A.液状〜泥状の便が1日に3回以上出る場合は下痢と判断して早めに医師の診察を受けましょう。脱水になると、口の渇き、全身の倦怠感などの自覚症状に続いて、手足のしびれを感じることがあります。特に、高齢の患者さんは脱水になりやすく注意が必要です。
下痢の治療では、問診や検査によって判明した原因によって最適な治療法が選択されます。一般的には、下痢の症状を軽減する薬の処方、下痢を引き起こしやすいがん治療薬の減量などが検討されます。
Q.生活の中でできる工夫を教えてください
A.下痢になったら自己判断をせず、まずは医師や看護師に相談しましょう。
その上で、原因によっては生活の中の工夫で症状や下痢に伴う苦痛を改善できることもあります。次のことを参考にしてみてください。
食事での工夫
- 脱水防止のため、常温の水分をこまめに補給する
- 下痢になりやすい食品(冷たい飲み物、牛乳、揚げ物、ビールなど)は控えめに
- 下痢のときには消化に良いもの(おかゆ、うどん、豆腐、卵など)をゆっくり食べる
その他の工夫
- おなかを冷やさない工夫をする(薄手の腹巻きや膝掛けなどを活用する)
- 汚れたおむつ、パッド、下着はこまめに取り替える
- トイレに行ったときは、温水洗浄便座であれば低圧かつ温かいお湯でやさしく洗う
- 弱酸性、無香料、低刺激性の石けんを選び、十分に泡立ててから洗う
- 水分は、こすらずやさしく押さえながら拭き取る
- トイレットペーパーに吹き付けて使うオイル入りの洗浄剤や皮膚に直接塗る撥水(はっすい)性の高い保護クリームの使用がおすすめ
- 外出時はトイレの場所をあらかじめ確認しておくと安心