抗がん剤治療(などの薬物療法)による副作用で髪が抜けることはよく知られていますが、じつはまゆ毛やまつ毛も抜けることがあります。一時的な症状とはいえ、見慣れた顔の印象が変わるのはショックが大きいもの。いざという時に慌てないために、まゆ毛やまつ毛の脱毛について知り対処法を心得ておきましょう。
Q.まゆ毛やまつ毛はいつ頃から抜け始めますか?
A.まゆ毛やまつ毛は、多くのケースで髪に続いて抜け始めます。髪が抜け始めるのは1度目の抗がん剤治療(などの薬物療法)から約1〜3週間後ですので、髪が抜け始めたらまもなくまゆ毛やまつ毛も抜ける可能性があることを覚えておきましょう。
髪と同じように、まゆ毛やまつ毛も脱毛の原因となる薬の治療が終わり3カ月程度経過すれば再び生えてきますが、不安や心配なことがあれば看護師や医師に伝えるといいでしょう。
なお、抗がん剤治療(などの薬物療法)による脱毛が全身に起こることがあるのに対し、放射線治療による脱毛は照射した部位にだけ起こります。
Q.まゆ毛が抜けたときの対処法を教えてください
左から順にペンシル、リキッド、パウダー
A.まゆ毛の脱毛は、化粧で補うことができます。まゆ毛のメイク経験がある方はこれまでのメイクと同じ方法で描いてみてください。
メイクの経験がない方はまず、ドラックストアや100円均一ショップの化粧品コーナーに行ってみましょう。そこにはペンシルタイプ、リキッドタイプ、パウダータイプなどたくさんのまゆ毛用化粧品(アイブロウ)が並んでいます。たくさんあって悩んでしまう場合は、メイクが初めての方でも使いやすいパウダータイプがおすすめです。
しっかりとまゆ毛の形に描かなくても、うっすらとまゆ毛のようなものがあるだけで顔の印象はずっと優しくなります。まずはまゆ毛のあったところに、少しずつパウダーなどを乗せてみましょう。
最近では、まゆ毛を描くためのテンプレートやまゆシール、まゆスタンプなど、より簡単にまゆ毛を描くことができるアイテムも豊富です。これらもドラッグストアや100円均一ショップ、インターネットなどから手軽に購入できます。「毎日メイクするのはちょっと…」という方には、取り外す必要がなくつけたまま過ごせる「つけまゆ毛」という選択肢もあります。
Q.上手にまゆ毛を描くポイントはありますか?
目の上に真っすぐな線を描いてから目尻側に少し角度をつける
A.まずは難しく考えずに、まゆ用パウダーなどを使って目の上に真っすぐな線を描いてみましょう。抜けた後だとイメージしにくいため、まゆ毛が抜け切る前から少しずつ練習をしておくことがポイントです。
脱毛する前に顔の写真を撮っておくと、顔とまゆの自然なバランスを確認できて便利です。満足のいく仕上がりにならなくても気にしすぎる必要はありません。実際には左右で少し違いがある方が自然に見えるのです。
鏡に近づきすぎるとついつい細部ばかりに目が行ってしまうので、ある程度描けたら鏡から離れて顔全体の印象を確認しましょう。細部にこだわりすぎず、全体のバランスをみることが大切です。
ワンポイントアドバイス
- 脱毛前の顔の写真を撮っておく
- まゆ毛が抜け切る前に何度か練習をする
- 目の上にパウダーなどで真っすぐな線を引いてから調整する
- 細部にこだわらず顔全体とのバランスを確認する
- クリームをたっぷりつけているとパウダーがよれたり色がのらなかったりするので、ティッシュなどで押さえて油分を取り除いてから描く
描いたまゆは、メイク落としを使って落とします。メイク落としには、リキッドタイプ(オイル・ジェルなど)やシートタイプ、洗顔と一体になったタイプなどがあるので肌に優しいものを選びましょう。化粧品によっては洗顔石鹸のみで落とすことができるものもあります。
Q.まつ毛が抜けた時の対処法を教えてください
A.まつ毛が抜けることで最も注意したいのは、目にほこりや花粉が入りやすくなってしまうことです。そうすると、目が充血したり、トラブルが起こりやすくなってしまうので注意が必要です。対策の一つとして、メガネをかけることで、ほこりや花粉をブロックしてくれるので、選択肢に入れるといいでしょう。
また、見た目が気になる方も少なくありません。まつ毛が抜けると目元がぼんやりした印象になりやすいため、つけまつげを付ける方もいます。しかし、治療中の肌は敏感なため、つけまつげの接着剤の刺激が気になるという方も。
そんな時はアイラインで目元を強調することで、まつ毛がある時とほとんど変化のない印象を作ることができます。アイライナーは、アイブロウと同じようにドラッグストアや100円均一ショップで購入でき、ペンシルタイプ、リキッドタイプ、パウダータイプなどさまざまなものがあります。どれを選べばいいかわからない場合は、ドラッグストアの美容部員*に相談することもできます。
また、先ほど触れたメガネにも顔立ちをはっきりさせる効果があります。フレームの太いメガネなら、よりぼんやりとした印象を軽減することができるのでおすすめです。
* お客さんのメイクの悩みをヒアリングしたり、実際にメイクをしたりする専門スタッフ。設置していない店舗もある
いかがでしたか。ちなみに脱毛中は、まゆ毛・まつ毛だけでなく鼻毛も抜けます。鼻毛がないと鼻の中が乾燥して粘膜が傷みやすくなるため、外出時はマスクを着用することをおすすめします。
繰り返しにはなりますが、がんの治療による脱毛は一時的なもので、原因となっている治療が終わればまた自然に生えてきます。不安な気持ちはひとりで抱え込むことなく、主治医や看護師と共有していきましょう。