ストーマの扱いに慣れてくれば、従来とほとんど変わらない生活を送ることができます。ここでは、ストーマ装具のしくみや交換方法に加え、ストーマを管理する上で注意したいポイントについて説明していきます。
ストーマ装具のしくみ

ストーマ袋の排出口の形状には、閉鎖型、開放型、キャップ型の3種類あり、左はキャップ型、右は開放型の例
ストーマ装具は排せつ物を収集する「ストーマ袋」と、袋を皮膚に密着させるための「面板」の2つの部分から構成されています。このうち、袋と面板があらかじめ一体になっているものを「ワンピースタイプ*1」、袋と面板が分かれているものを「ツーピースタイプ*1」といいます。
ワンピースタイプとツーピースタイプには、それぞれにメリット、デメリットがあります。好みや皮膚の状態、生活環境などを考慮した上で、自分に合ったものを選択することが大切です。
*1 ワンピースタイプを「単品系」、ツーピースタイプを「二品系」という場合もあります。


また、ストーマの管理には、次のようなアクセサリー類が必要です。
・消臭剤
排せつ物の臭いを軽減させます。ストーマ袋の中に直接入れる液状のものや、排せつ後の空間に吹きかけるものなどがあります。
・粘膜剥離剤
粘着式の面板を皮膚からはがすために使います。目薬のようにたらして使う滴下タイプやワイプ(拭き取り)タイプ、スプレータイプなどがあります。
・皮膚保護剤
ストーマ周囲のシワやくぼみを埋めて皮膚を平面な状態に近づけ、便が漏れるリスクを軽減したり、排せつ物や分泌物を吸収することで周囲の皮膚を保護したりします。リングタイプや板状、粉状のものなどがあります。
・皮膚被膜剤
皮膚に薄く塗ることで、皮膚保護剤や面板の粘着テープをはがす際の刺激を和らげるために使います。スプレータイプ、ワイプ(拭き取り)タイプなどがあります。
・排せつ物凝固剤
ストーマ袋の中に入れておくことで排せつ物の水分を吸収して固める(ゲル化させる)ことで、処理がしやすくなります。粉状、固形状、シート状のものがあります。
・洗浄剤
ストーマ装具を交換する際に周囲の皮膚を洗浄するために使います。普段から使用している石鹸などでも代用が可能です。拭き取りタイプの洗浄剤もあり、水が十分に使用できない外出時や災害時への備えとしても重宝します。
ストーマ装具の交換方法
では、ストーマ装具の交換方法を見ていきましょう。ストーマ装具の交換頻度は、製品によって、毎日交換するものから、袋を交換しながら1週間程度使用するものまでさまざまです。適切な交換間隔にも個人差があるため、どのタイプを選択するかは医療スタッフと相談しながら決定します。
ストーマ装具の交換手順は以下を参考にしてください。
【ストーマ装具の交換手順】
交換の準備
・交換に必要なものを用意する
装具交換とストーマケア
・袋部を取り外し、面板をゆっくりとはがす(ワンピースタイプの場合は袋部ごとはがす)

・周辺の皮膚をやさしく洗浄し、水分をしっかりと拭き取る
・新しい装具を貼り付け、密着させる

後始末
・袋内の便をトイレに流す
・ストーマ装具をゴミ袋に入れる
・燃えないゴミとして廃棄する*2
*2 廃棄区分は地域によって異なる場合があります。詳しくはお住まいの自治体へご確認ください。
薬物療法中のストーマケアの注意点
薬物療法中は、ざまざまな副作用が引き起こされる可能性があり、それが日々のストーマケアにも影響を与えることがあります。主な有害事象とセルフケアを確認しておきましょう。
【ストーマケアに影響を及ぼす抗がん剤の有害事象とセルフケア】
下痢
下痢になると、皮膚保護剤がふやけたり・溶けたりするのが早くなり、皮膚障害が起こりやすくなります。通常より、ストーマ装具の交換の間隔を短くしたり、板状の皮膚保護剤などをストーマ近接部に追加したりするなどして、耐久性を高めます。
末梢神経障害・手足症候群・爪周囲炎
末梢神経障害では、指先の感覚障害、手足症候群では手や足にチクチク・ピリピリとした痛みが起きたり、悪化すると潰瘍(かいよう)やびらん、爪の変形などが生じたりすることがあります。
板面のカットや排せつ物の処理が従来通りできているかどうかを確認し、難しいようであれば、取り扱いが容易なストーマ装具に変更します。
皮膚障害[皮膚乾燥・色素沈着・ざ瘡様皮疹(そうようひしん)]
皮膚障害が起こると、ストーマ装具をはがす時の刺激によって、表皮が損傷を受けやすい状態になります。はがす時の刺激をできる限り小さくするために、非アルコール性の粘着剥離剤を使用します。スキンケアは、皮膚への刺激が少ない弱酸性の洗浄剤でやさしく行います。
吐き気・嘔吐(おうと)
排せつ物の臭いに刺激されて吐き気が起きたり、嘔吐してしまうことがあります。ストーマ袋に消臭剤を入れて臭いを抑えたり、消臭スプレーを利用したりして対処します。
また、投与された抗がん剤の多くは48時間以内に排せつされます。そのため、抗がん剤治療をしている患者さんの排せつ物や使用済みのストーマ装具、リネン類を扱うときは、残留した抗がん剤に直接触れることのないよう、細心の注意を払いましょう。
【在宅での曝露(ばくろ)*3対策】
*3 意図せず、抗がん剤に触れたり、その影響の下に晒されること
排せつ物の処理時
・排せつ物が便器から飛び跳ねないようにする
・水を流す際は、トイレの蓋を閉めて行う
・しっかりと流しきるために、水量が不十分な場合は2回流す
ストーマ装具の交換時
・マスクと手袋を着用して交換する
ストーマ装具の廃棄時
・ビニール袋を二重にして縛る。一般ごみとして廃棄が可能
排せつ物でリネンが汚れた場合
・手袋を着用して予洗いを行ってから、通常の洗濯をする
ストーマでの生活に慣れるまでは大変に感じることも多いかもしれませんが、ストーマ装具を適切に装着できるようになれば、従来とほとんど変わらない生活を送ることができます。
ストーマに関する悩みは、病院の相談窓口やがん相談支援センター、専門外来であるストーマ外来などに相談することができます。特に問題がない場合でも、定期的に受診して、主治医や医療スタッフとともにストーマの状態を確認しておきましょう。