大腸がんの患者さんにとって、放射線治療は重要な治療法のひとつですが、副作用が起こる場合もあります。ここでは、大腸がんの放射線治療の流れや副作用とその対策についてわかりやすく説明します。
放射線治療の流れ
大腸がんの放射線治療は、主治医や放射線腫瘍医、放射線技師、看護師、などがチームを組んで行います。治療は院内の放射線室で行われ、治療中に痛みはありません。
ほとんどの患者さんが通院で治療を受けます。一般的な放射線治療では、平日(月〜金曜日)の5日間、毎日照射を行い、それを何週間かにわたって繰り返します。1回の照射量や通院回数、治療期間は患者さんによって異なります。
初回の治療時は、照射位置の確認を行うため時間がかかることがありますが、2回目以降はおよそ10〜20分程度で終わります。治療期間中は定期的に照射位置の確認が行われるほか、週に1度は主治医による診察を受けます。治療による不安や不調を感じたら、その都度、医療スタッフや主治医に相談するようにしましょう。
副作用・合併症と対策について
放射線治療のあとは、副作用や合併症が現れることがあります。副作用は、治療中や治療後すぐに起こる「早期合併症」と、治療が終了して半年〜1年ほど経過してから現れる「晩期合併症」に分けられます。症状が表れたときは、どんなに小さなことでも主治医に共有するようにしてください。
では、大腸がんの放射線治療によって起こりうる副作用・合併症とその対策について見ていきます。
早期合併症
【疲れやすさ・だるさ・倦怠感】
治療後は、疲れやすい、だるい、やる気が出ない、などの症状が表れることがありますが、そのほとんどは、数週間程度で軽減していきます。放射線治療中のこれらの症状は、放射線の影響に加えて精神的負荷や通院の疲れも原因となっていることがあります。
治療中は無理をせず休むことが大切です。調子が良いときは、軽い運動をするのもよいでしょう。疲労の回復には十分な睡眠が大切なので、眠れない場合は医師に相談し睡眠薬の処方を検討してもらいます。
【食欲不振】
治療中に食欲不振が起こることがあります。原因は患者さんによってさまざまですが、放射線による影響だけでなく、病気への不安などのストレスによるものもあります。
治療後は、放射線によってダメージを受けた正常細胞を修復させるためにも、普段以上にカロリー、栄養を摂ることが理想的です。少量ずつ数回に分けて食べたり、高カロリーの食品を意識的に摂ったりするなどの工夫をしましょう。食事について、主治医や治療スタッフ、栄養士に相談することも大切です。
【感染しやすくなる、貧血、出血しやすくなる】
放射線の影響で白血球、赤血球、血小板が減少し、感染症、貧血、出血などの症状が起こりやすくなることがあります。これは、骨髄に放射線が照射されることで、血液をつくり出す能力が一時的に低下するためです。
治療中は定期的な血液検査で血球数の変化を観察し、減少の度合いが大きい場合には治療を休止することもあります。
【皮膚トラブル】
照射された部位の皮膚には、乾燥やかゆみ、熱感、色調の変化、むくみ、表皮の剥がれなどの皮膚トラブルが起こることがあります。患者さんによって、症状や回復時間は異なりますが、多くの場合、照射終了後2週間〜1カ月程度でほぼ治療前の状態に戻ります。しかし、汗腺や脂腺の機能回復には時間がかかるため、乾燥肌や汗をかきにくいなどの症状が残る場合があります。
皮膚トラブルには予防的ケアが大切です。入浴やシャワーはぬるめのお湯で、できるだけ短い時間で済ませるようにしましょう。また、体を洗う際は、肌への刺激の少ない石けんを使い、泡でやさしく撫でるように行います。
このほかにも放射線治療による早期合併症には、吐き気、軟便・下痢、腸炎、膀胱炎などがあります。適切な処置や経過観察のために、普段と違う症状や感覚がある場合は、どんな小さなことでも主治医や医療スタッフに早めに相談するようにしましょう。
晩期合併症
放射線治療の晩期の副作用・合併症には、腸出血、潰瘍(かいよう)、穿孔*1、瘻孔(ろうこう)形成*2、頻便、腸閉塞(ちょうへいそく)などがあります。これらは、放射線量や照射する部位の大きさなどによってある程度発生頻度が推定可能です。またまれに、二次がんの発生などもあります。重篤なケースはごく少数ですが、日頃から注意して気になることがあったら主治医に相談することが大切です。
*1 大腸に穴が開くこと
*2 異なる部位や組織、臓器同士が異常な空洞でつながった状態。炎症によって起こる
放射線治療後の注意点
放射線治療後は、治療の効果が十分かどうかや副作用の有無などを調べるため、定期的に放射線腫瘍医の診察と必要に応じた検査を受ける必要があります。治療の目的や方法、副作用・合併症などに関する不明点があれば、まずは主治医や放射線腫瘍医に確認することが大切です。