放射線治療は、手術や薬物療法と並んで、がんの3大治療のひとつに数えられる治療法です。ここでは、大腸がんにおける放射線治療の目的や方法について詳しく見ていきましょう。
放射線治療とは
放射線治療とは、患部に高エネルギーの放射線(X線)を照射してがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする治療法です。多くは、がんの再発を予防したり、がんを小さくしたり、再発や転移が起きた場合の局所治療*1として用いられます。また、がんによって引き起こされる症状(骨転移による痛みや脳転移による神経症状など)の緩和のために行われることもあります。
放射線治療のみを単独で行うこともありますが、手術や薬物療法と併せて行われることが多い治療法です。ほとんどの患者さんは、通院で治療を受けており、日常生活を続けることができます。近年では、がん細胞に放射線を集中させることで、より少ない副作用と高い治療効果を両立させる方法も開発されています。
*1 治療を行った部分だけに直接的に効果を示す治療。他に手術など。
大腸がんの放射線治療の目的
大腸がんの放射線治療の目的は大きく2つのケースがあります。
1. がん細胞の根絶を目指すもの(補助放射線治療)
切除可能な直腸がんに対して、手術に放射線治療を補助的に組み合わせる治療法です。骨盤内の再発予防や、がんを小さくしてから手術することで切除範囲を狭くし、ストーマを避けることを目的として行われます。放射線の効果を高めるために、薬物療法も同時に行われる場合が多くあります。
2. 痛みなどの症状の緩和を目指すもの(緩和的放射線治療)
再発した大腸がんの症状を和らげることを目的として行われます。骨盤内の再発や、骨転移、リンパ節転移、脳転移などが起こったとき、転移先の部位へ放射線を照射することで、多くの場合、症状の改善がみられます。
放射線治療のタイミングと目的
放射線の照射を行うタイミングには、手術前、手術中、手術後の3つがあります(手術と放射線治療を組み合わせて行う場合)。それぞれの目的を見ていきます。
1. 手術前に放射線治療を行う場合(術前照射)
・手術中に体内に散らばるおそれのあるがん細胞をできるだけ死滅させる
・がん腫瘍をできるだけ小さくして手術をしやすくする、また切除部位を最小に抑える(直腸がんの場合:肛門を切除しなくてすむようにする)
2. 手術中に放射線治療を行う場合(術中照射)
・手術中に直接目で確認しながら、確実にがんに照射する(腸管など、放射線に弱い体の組織を避けた照射が可能)
3. 手術後に放射線治療を行う場合(術後照射)
・手術で切除しきれなかったがん細胞を死滅させ、再発の可能性を下げる
放射線治療のスケジュール
放射線治療は、患者さんごとの治療計画に基づいて進められます。どのくらいの放射線量を何回に分けて照射するかは患者さんごとに異なりますが、一般的には1日1回、月曜から金曜まで週5回の治療を6〜8週間*2にわたって行います。
治療は院内の放射線治療室で行います。初回は、放射線を当てる位置決め作業に時間がかかることがありますが、2回目以降は、10〜20分ほどで終わります。実際に放射線が照射されている時間は数分で、痛みは感じません。適切な場所にピンポイントで放射線を当てるために、固定具を使用することがあります。
*2 外部照射の場合。放射線治療のスケジュールの一例であり、患者さんによって異なります。
副作用・合併症について
放射線の照射は、周辺の正常な組織にも影響を及ぼすことがあります。大腸がんの放射線治療による副作用・合併症には、治療中や終了後すぐに表れるもの(早期合併症)と、治療後半年〜1年ほど経過した後に表れるもの(晩期合併症)があることが知られています。
早期合併症には、倦怠感、だるさ、食欲不振、貧血、白血球の減少(感染しやすくなる)、皮膚炎、膀胱炎などがあり、腹部・骨盤に照射する場合は下痢、頭部に照射する場合は脱毛などが起こる可能性があります。
また、晩期合併症には、頻便、膀胱炎・腸炎、腸閉塞、潰瘍・穿孔(腸壁に穴が開く)などがあります。
治療期間中は、基本的に週に1回医師の診察を受けます。もし体調に変化があれば、些細なことだと自己判断せずに、しっかりと伝えるようにしてください。