がんの手術で大腸を切除する場合、毎日の食事については、どのようなことに気をつければよいのでしょうか? 手術前後の食事の取り方や注意点、おすすめの食べ物と控えた方がよい食べ物について、わかりやすく説明します。
手術前の食事で気をつけたいこと
多くの場合、手術前日の昼食までは普段と変わらない食事を取ります。ただし、がんにより、腸内が狭くなっている場合には、「腸閉塞(ちょうへいそく)」を防ぐために、食物繊維の多い食べ物や消化の悪い食べ物は避けるようにしましょう。
手術後は消化器を補う食べ方を
手術後は、基本的には「食べてはいけないもの」などの食事制限はありません。手術の傷や体力を回復させるためには、しっかりと栄養を摂ることも大切です。特に、タンパク質はしっかり摂るようにしましょう。
その際、弱ってしまった腸が消化不良を起こさないように、腸への負担が少ない食べ方をするようにします。消化の良い食べ物を選び、しっかりとよくかんで、ゆっくり少しずつ食べましょう。いっぺんにたくさん食べてしまうと、弱った腸に大きな負担がかかってしまうため、注意が必要です。朝・昼・晩の基本の3食は少なめに、2~3回の間食(ヨーグルトやおやつ、サンドイッチやおにぎりなどの軽食)を追加し、1日の食事を5~6回に分けて食べるとよいでしょう。
消化機能への影響
手術から1~3カ月ほどは、腸の動きが弱いため「腸閉塞」が起こりやすくなっています。腸閉塞とは、腸の動きが悪かったり腸管が狭くなったりして食べ物や便が詰まってしまうこと。強い吐き気やおう吐、腹痛を伴い、緊急手術が必要となることや命に関わることもあります。
起こる原因はさまざまですが、最も多いのが開腹手術の影響による「癒着性腸閉塞」で、腹壁と腸管や腸管同士が癒着し腸が折れ曲がるなどして腸管の中が狭くなるために起こります。
腸閉塞を起こさないためには、食事の回数を増やし、1回に食べる量を減らすことが大事です。消化の良いものを少しずつ、ゆっくりとよくかんで食べるようにします。食物繊維の多い食べ物は細かく刻むなど、消化しやすくする工夫をするとよいでしょう。
食べ物では、食物繊維の多いもの、さつま芋や豆類などのガスが発生しやすいもの、唐辛子やカフェイン・炭酸飲料などの刺激が強いものは、控えめにするなどがあります。
また、手術後しばらくの間は、排便リズムが不安定なため、便秘・下痢ともに起こりやすいのが特徴です。いずれの場合も十分な水分補給を心がけます。また、便秘の際には、ウォーキングやストレッチなど無理にならない程度の運動も効果的です。
切除位置による影響や注意点の違い
大腸の手術は、切除した位置や部位により、術後に表れる影響や注意点が異なります。
大腸の上側である結腸を切除した場合は、腸内の水分吸収力が減少するため、下痢や水様便になりやすいのが特徴です。また、腸のぜんどう運動が低下し便秘になりやすいことも。
大腸の下側である直腸の場合は、便を腸内にとどめる力と押し出す力が低下するため、便の回数増加や量の減少といった排便障害が起こりやすくなります。
また、ストーマ(人工肛門)を造設した場合でも、基本的に食事制限はありません。しかし、臭いに敏感になるケースも少なくないため、ガスが発生しやすい食べ物・便の臭いが強くなる食べ物は控えるのがよいでしょう。