大腸がんの手術にはどんな準備や心構えが必要なのでしょうか。入院から退院までの流れや、手術後の日常生活での注意点を理解してスムーズな回復につなげていきましょう。ここでは、手術前後の流れや、退院した後の食事や運動の注意点など、大腸がん手術を控えた患者さんにとって役立つ情報をまとめました。
入院から退院までの流れ
患者さんの状態や医療機関の方針により、入院日数は異なりますが、標準的な大腸がんの手術では、手術の2〜3日前に入院し、術後は、7〜10日程度で退院が可能です。
下の図に、大腸がんの手術による入院から退院までの一般的な流れを示しているので参考にしてみてください。
※手術の詳しい内容は「大腸がん手術の目的と種類を知る」をご覧ください
手術後の日常生活について
順調な回復を促すため、大腸がんの手術後は、日常生活の注意が必要です。禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、適度な運動など、規則正しい生活を送るように心がけましょう。日常での注意点は、患者さんによって異なるため、主治医と相談しながら無理のない範囲で過ごすことが必要です。
体力の回復
大腸がんの手術後は、通常1〜3カ月程度で手術前と同じような日常生活を送れるようになります。まずはウォーキングやストレッチなどの軽い運動から始め、こまめに体を動かす習慣をつくることが大切です。
ただし、腹筋を使う激しい運動は数カ月間控える必要があります。ご自身の体力に合わせて、無理のない範囲で徐々に行動範囲を広げていきましょう。
食事
大腸がんの手術後は、原則として退院したあとの食事制限はありません。
しかし、しばらくは消化に負荷の掛かる食物繊維の多い食べ物や脂分の多い食べ物は避けるようにしましょう。また、食事は、ゆっくりよく噛んで、腹7〜8分目を心がけて食べ過ぎないようにすることが大切です。
※食事の詳しい内容は「大腸がんの手術前後の食事で気をつけること」をご覧ください
手術で起こりやすい合併症・後遺症
大腸がんの手術後では、おなかの張りや縫合不全、腸閉塞などの合併症や排便・排尿障害などの後遺症が起こることがあります。これらの症状が出た場合には、すぐに担当医に相談しましょう。手術にあたっては、事前にしっかりと合併症や後遺症のリスクについて説明を受け、理解しておくことが大切です。
【縫合不全】
縫合不全は、手術の際に縫い合わせた部分[吻合(ふんごう)部]から便が漏れることです。感染が広がると重度な症状に発展することもありますが、軽度であれば、食事制限や点滴治療で治すことができます。
それが難しい場合は、吻合部より手前の腸管を使って一時的に人工肛門をおなかにつくり、吻合部の炎症が落ち着くまで待ちます。吻合部が回復したら、腸管同士を繋ぎなおして再び肛門からの排泄に戻します。
【腸閉塞】
手術後、腸の動きが回復すると、ガスや便が出るようになります。その時に腸のどこかが狭くなっていると、食べものやガスが詰まったり、通過しづらくなったりする、腸閉塞と呼ばれる状態になり、お腹の張りや嘔吐を伴うようになります。
腸閉塞が起きたときは、食事を点滴に切り替えて、腸を安静にさせます。また鼻からのチューブで、胃液や腸液を排出させる治療が行われます。これらの治療で改善が見られない場合は、手術を行うことがあります。
【排尿障害】
直腸がんの手術では、自律神経の損傷により、排尿障害が起こることがあります。尿が出にくくなることや残尿感があることが主な症状で、薬を使ったり、尿を出すための細い管を膀胱に挿入して対処したりします。時間の経過によって症状が改善することもあります。
※排尿障害の詳しい内容は「大腸がん手術の後遺症について〈排尿障害〉」をご覧ください
【排便障害】
特に直腸がんの手術で起こることがあり、肛門を温存した場合でも、排便には変化が生じます。排便回数が増加したり、排便のコントロールが難しくなったりし、薬や運動療法などで治療します。新しい排便のリズムに慣れるまでは注意するようにしてください。
※排便障害の詳しい内容は「大腸がん手術の後遺症について〈排便障害〉」をご覧ください
【性機能障害(特に男性)】
直腸がんの手術時に自律神経が損傷することで起こります。症状は男性に顕著で、射精障害や勃起障害などが多く見られます。これらの障害がみられた場合は、まずは主治医に相談するようにしてください。
※性機能障害の詳しい内容は「大腸がん手術の後遺症について〈性機能障害〉」をご覧ください
これらのほかに、主に肛門に近い位置に発生した直腸がんのケースでは、ストーマ(人工肛門)をつくる場合があります。ストーマの基本情報についてお知りになりたい方は下記をご覧ください。
※ストーマについての詳しい内容は「ストーマ(人工肛門)の基本」についてはこちらをご覧ください