食べ物の最後の通り道で、小腸から続く消化器官である「大腸」。「結腸(けっちょう)」と「直腸(ちょくちょう)」の大きく2つの部位に分かれますが、それぞれどんな役割を担っているのでしょうか。ここでは、大腸のしくみとはたらきについて見ていきます。
大腸のしくみ
「大腸」は、「小腸」と「肛門」の間にある全長1.5~2m、直径約5〜7cmほどの管状の臓器です。小腸から続き、右下腹部あたりから上に向かって、おなかの中を大きく一周するようにのびていて、肛門へとつながります。小腸から続き、盲腸、上行(じょうこう)結腸、横行(おうこう)結腸、下行(かこう)結腸、S状結腸からなる結腸と、直腸に分かれています。
ちなみに、大腸の内壁の表面積は100㎡ほどで、広げるとテニスコート半分ほどの広さにもなります。
消化の最終段階が行われる場所であり、余分な水分やミネラル(塩類)を吸収して便を作り、肛門へと送る役割をしています。通常、私たちが食事をしてから排泄に至るまで24〜72時間かかりますが、そのうち大腸を通過するのにかかる時間は15時間ほどといわれています。
大腸のはたらき
さらに「結腸」と「直腸」それぞれのはたらきを見ていきましょう。
結腸では、小腸から運ばれた液状の消化物から、ゆっくりと余分な水分やミネラルなどを吸収することで、だんだんと固形の便を作っていきます。
また、食物繊維を分解するのも結腸の役割です。たんぱく質・脂質・炭水化物などは小腸から体の中に吸収されますが、食物繊維は分解されずに小腸を通過してきます。この食物繊維をヒトが吸収できる成分に分解し、栄養の吸収を助けているのが、大腸内に数多く生息する細菌(腸内細菌)です。
そのほか、便をスムーズに移動させるための粘液の分泌や、口から入ってきたさまざまな病原細菌に対する免疫器官(自己防衛)としての役割も担っています。
腸の動きは、自律神経によってコントロールされています。結腸では「進んでは戻る」、つまり便が行ったり来たりするの(緊張波)が特徴で、何度も行き来することで粘膜と便の接触時間が増え、水分やミネラルの吸収が効率よく行えます。また、固形状になってきた便を直腸へと進めるのは「縮んでは緩む」を繰り返す動き(ぜんどう運動)であり、この動きによって便がスムーズに移動していきます。
結腸から届いた便を、一時的に溜めておくのが直腸の役割です。直腸の中に一定量の便が溜まると、腸の一部や腹部の筋肉が刺激され、その刺激が排便中枢という神経から大脳へと伝わり、便意をもよおします。これを排便反射といいます。そして、脳から排泄の司令が出ると、肛門の筋肉がゆるみ、便が体外へと押し出されます。
大腸の不調が起こるメカニズムとは?
大腸の2大不調といえば「下痢」と「便秘」でしょう。大腸のはたらきが正常であれば、大腸の動きが滞りなく行われ適切な排便となりますが、さまざまな原因により、腸の動きが悪くなることで症状が表れます。
【下痢になる理由】
下痢が起こる原因はさまざまで、食べすぎ・飲みすぎ、体の冷え、ストレスや緊張などが挙げられます。
こうした理由により自律神経のバランスが崩れ、腸の動きが過剰に促進されると、腸内での移動が早く行われてしまうため、水分を十分に吸収する前に消化物が直腸に移動してしまいます。その結果、液状や泥状の便として排出されてしまうのです。また、排便回数も多くなります。
【便秘になる理由】
腸のはたらきが低下・動きが鈍くなることで結腸に便が長時間とどまった結果、水分が吸収され過ぎてしまい、硬く排せつしにくい便となってしまいます。
便秘が起こる原因もさまざまで、運動不足、水分不足、食事量や食物繊維不足、環境変化、ストレス、便意の我慢などが挙げられます。
ちなみに、毎日排便がないからといって便秘というわけではありません。ひとつの基準として排便回数が週3回未満とありますが、2〜3日に1回の頻度が習慣になっており、さらに痛みや不快感がなければ、あまり気にしなくてもよいでしょう。また、毎日排便していても、十分な量の便が出ていなかったり不快に感じたりするのであれば、便秘の可能性があります。
さらに、便が硬くて出しにくいなど「排便困難症状」が続く場合も、慢性便秘症といえそうです。
なお、20〜40代に多くみられる、便秘や下痢を何度も繰り返す「過敏性腸症候群」も、まさにストレスによる自律神経の乱れが誘因のひとつであるとされています。