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胃がんの治療方針が決まる過程を知る

#ステージ#手術#標準治療#治療#薬物療法
公開日2023.05.24

「どんな治療があるのだろう」「この治療法を提案されたのはどうしてかな」。主治医からの治療方針の説明前後で、そんなふうに思う方がいるかもしれません。


胃がんの治療は基本となる考え方の型をもとに、患者さんごとに治療方針が立てられます。では、治療の方針や方法は、どのような過程を経て決定されていくのでしょうか。詳しく見ていきましょう。


治療方針を決めるための要素



「胃がん」の治療の方針を決めるための要素には、大きく「がんの状態(進行度、性質*1、発生場所など」と「体の状態(年齢、病歴・持病など)」、「患者さん本人の事情(仕事や趣味など生活・人生で大事にしたいこと、サポート者の有無など)」の3つがあります。


がんと体の状態は検査によって、患者さん本人の事情は診察やカウンセリングによって主治医のもとに集められます。主治医はそれらの要素から最適な治療を総合的に判断し、患者さんに提案します。


一般的に、治療方針は「胃がん治療ガイドライン」に沿って提案されます。「胃がん治療ガイドライン」には、科学的根拠があり、医学的に最も推奨される治療方法(標準治療)が記されています。


*1 がんが未分化型(がんがある程度まとまった状態)か、分化型(がんがパラパラと散らばりながら広がっている状態)か。また、がん細胞の増殖のスピードなども考慮される


段階的に決まっていく、胃がんの治療方針



定期検診や診察の際に行われる「胃X線検査」や「ABC検査*2」「胃内視鏡検査」などで胃がんが疑われた場合は、精密検査を行います。精密検査では、口から内視鏡を挿入して、疑わしい細胞を組織ごと採取します。採取した組織は、顕微鏡による病理検査*3に回され、がんかどうかを判定します。


胃がんと診断された場合は、さらにCTやMRI、エコーなどの画像検査を実施し、がんの大きさや、転移の有無などを確認。それらの情報をふまえて、がんのステージ(病期)が判定されます。胃がんの治療方針は、基本的にステージ(病期)ごとに大枠が決定されています。


*2 血液検査で胃がんのリスクを評価する方法

*3 細胞や組織を顕微鏡で観察することで、がんかどうか、がんの種類についての診断を確定するための検査。専門の病理医が行う


ステージの診断に用いられる指標


がんのステージ(病期)は、がんの深さ(T)、周辺リンパ節への転移(N)、他の臓器への転移(M)の3つの項目に基づき判定されます。この3つの項目のことをTNM分類といい、治療の方針を左右する重要な検討材料になります。


Tカテゴリー:がんの深さ(深達度)



胃がんは胃のもっとも内側の粘膜から発生し、組織の中を潜るように進行していきます。Tカテゴリー(深達度)では、がん細胞がどの組織まで入り込んでいるのかを判断します。T0の腫瘍なしから、進行するにつれT1~T4に分けられます。


なお、がんには、「早期がん/進行がん」という表現もありますが、それはこのTカテゴリー(深達度)の観点の指標であり、後述するステージとは別のものです。


Nカテゴリー:周辺リンパ節への転移


がんは進行するにつれ胃壁を越えて、周辺のリンパ節に転移します(リンパ節転移)。リンパ節転移が起こるとがん細胞がリンパ液の流れに乗って、さらに離れたリンパ節へと広がるリスクがあります。


Nカテゴリーでは、胃の近くにあるリンパ節への転移の有無を判断します。N0のリンパ節転移なしから、リンパ節転移の程度によりN1~N3に分けられます。


Mカテゴリー:他の臓器への転移


がん細胞がリンパや血液の流れに乗って、他の臓器や離れたリンパ節に広がることを遠隔転移といいます。遠隔転移の有無を判断するのがMカテゴリーで、M0の遠隔転移なしとM1遠隔転移ありの2つに分類されます。


なお、胃がんが肺に遠隔転移した場合は、肺がんではなく胃がんの肺転移と表されます。


TNM分類とステージ(病期)との関係


TNM分類の結果をレベル分けして表したものをステージといいます。胃がんの場合、ステージは1〜4まであり、進行するにつれて、ステージ1、ステージ2、ステージ3、ステージ4と表されます。TNM分類は複雑なため、一般的に患者さんにはこのステージを用いた説明が行われます。


胃がんのステージを判断する機会は治療中に2度あります。1度目は検査を実施し、TNM分類に従って導かれる「推定」のステージ。2度目は、実際に内視鏡治療や手術を行ったあと「確定」したステージです。手術後に、最初に医師から聞いていたステージから変わったというケースがあるのはこのためです。


最初の治療法選択の流れ


下のチャート図では、治療前の検査で得られた情報をもとに、TNM分類に従いステージ判定し、そこから選択される治療を表しています。


【遠隔転移がある場合】


まず、遠隔転移がある場合(M1)は、手術ですべてのがんを取り除くことは難しいため、多くの場合で、手術より先に薬物療法や緩和手術、放射線治療が実施されます。


【遠隔転移がない場合】


遠隔転移がない場合(M0)は、がんの深さ(T1〜4)や周辺リンパ節への転移の有無(N0〜N3)などによって、内視鏡切除が可能かどうか、また手術を行う場合は、胃のどの範囲を切除するかが選択されます。


ちなみに、このときのTNM分類によるステージ判定に用いられる分類方法を「臨床分類」といい、以下のように表されます。



この臨床分類をもとにして判定されたステージのことを臨床病期といいます。


内視鏡治療・手術後の治療方針



内視鏡治療や手術後に行う病理診断(病理分類による判定)を経て、ステージが確定します。


ステージ1は経過観察、ステージ2、3(T1およびT3・N0を除く)は薬物療法(術後補助化学療法)、ステージ4は薬物療法、対症療法のように、その後の治療方針が決定します。


治療後のステージを確定する分類方法を「病理分類」といい、以下のように表されます。ステージを確定する「病理分類」は、ステージを推定する「臨床分類」よりも細かな基準になっていることがわかります。



この病理分類をもとに判定されたステージのことを病理病期といいます。


なお、放射線治療や薬物療法を行った場合は、内視鏡治療や手術のように腫瘍を切除しないため、病理診断は行われず、病理病期は判定されません。


納得した治療方針を得るために


主治医は、これらの基準やそれぞれの患者さんの希望をふまえた上で、最適な治療を総合的に判断しています。胃がんの治療は長期にわたることも多いものです。主治医との信頼関係を築くためにも、治療方針の決定プロセスと決定に必要とされる要素の全体像や自身の治療方針が立てられた理由を知り、納得した状態で治療に臨むことがとても大切です。


提案された治療方針に関して疑問や不安がある場合は、遠慮をすることなく主治医に確認しておきましょう。

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この記事の監修者

佐藤 太郎(さとう たろう) 先生
大阪大学医学部附属病院 がんゲノム医療センター 准教授
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1993年弘前大学医学部卒業。内科医、米国での研究留学を経て、近畿大学腫瘍内科へ。2011年より大阪大学大学院医学系研究科に在籍。2023年4月より現職。胃がん、大腸がんなどの消化器疾患の抗がん剤治療や緩和ケア、がんゲノム医療を中心に診療を行っている。

参考資料

  • 国立がん研究センターがん情報サービス「胃がん 治療」
  • 国立がん研究センターがん情報サービス「集学的治療」
  • 国立がん研究センターがん情報サービス「もしも、がんが再発したら 再発、転移とは」
  • 国立がん研究センターがん情報サービス「用語集 病理病期」
  • 大阪急性期・総合医療センター 消化器外科「胃がんの主な治療方法」

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