「胃がん」は、かかる人が多いがん種のひとつですが、その症状や種類、治療法もさまざまです。そこで、胃がんとはどんな病気なのか分かりやすく解説します。
胃がんとは
胃がんは、胃にできるがん*1の総称です。そのほとんどは、胃粘膜の細胞が様々な要因によって変異(がん化)し、無秩序に増えることで発生します。がんは大きくなるにつれ粘膜層を超え、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜と深く進んでいきます。がん細胞が周辺に染み出るように広がることを浸潤(しんじゅん)といいます。
がんが一番外側の漿膜を越えると、肝臓や膵臓、大腸といった近くの臓器に直接転移したり、リンパ液や血液の流れに乗って、胃から離れた臓器へ転移したりしたりすることがあります。また、がん細胞がおなかの中に散らばる腹膜播種(ふくまくはしゅ)が起こることもあります。
胃がんはがん細胞がどの層まで到達しているかによって「早期がん」と「進行がん」に分けられます。粘膜下層より内側にとどまっているものを「早期胃がん」、固有筋層より深くに到達しているものは「進行胃がん」に分類されます。
*1 遺伝子変異によって生まれた「異常な細胞」が無秩序に増殖し、別の臓器に移るなどして、生命に重大な影響を与えるもの。悪性腫瘍(しゅよう)。
胃がんのタイプ
胃がんの90%以上を占めるのが、粘膜上皮細胞から発生する「腺(せん)がん」です。腺がんは、その広がり方の違いから「分化型」と「未分化型」に分けられます。
「分化型」はまとまって大きくなる一方で「未分化型」はパラパラと広がるように増殖します。一般的に「未分化型」は「分化型」よりも早く進行する傾向があるため、悪性度が高いとされています。
また、「未分化型」の中には、増殖スピードがとりわけ早い「スキルス胃がん」があります。スキルス胃がんは、胃壁を硬く厚くさせながら増殖する特異な性質を持ち、腹膜播種が起こりやすいことで知られています。
胃がんの症状
胃がんは早期の段階では自覚症状がほとんどありません。進行がんでも自覚できる症状がない場合があるほどです。
代表的な症状は、胃の痛み、腹痛、腹部の不快感、胸やけ、吐き気、げっぷ、食欲低下などです。しかし、これらの症状は胃炎や胃潰瘍、食べ過ぎ・飲み過ぎなどによっても起こるため、本人も病気に気づかず、定期検診(内視鏡検査・X線検査)で偶然がんが見つかるケースも少なくありません。
がんが進行すると、吐血や黒色便などの出血症状に加え、食べ物のつかえ、全身の倦怠感、体重減少などが表れることがあります。このような症状が続く場合は検診を待たずに、身近な医療機関に相談することをおすすめします。