胃もたれや胃の痛みなどで、普段からその存在を感じることも多い「胃」。その中では一体何が起きているのでしょう。ここでは、胃のしくみとはたらきについて分かりやすく解説します。
胃のしくみとはたらき
胃はアルファベットの「J」の形をした袋状の臓器で、みぞおちの辺りにあります。空腹時は細長くしぼんでいますが、食べ物が入ると膨らんで、食べたものや飲んだものをため込むことができます。その容量は、1.5〜2ℓにもなります。
また、胃は「噴門(入口)」と「幽門(出口)」の2カ所で内容物の通過をコントロールしています。噴門は食事の時以外は閉じていて、胃液や内容物が食道に逆流するのを防ぎます。幽門は消化が終わると開いて、十二指腸に内容物を少しずつ送り出します。一度に大量の内容物が腸に流れ込まないよう、一時的にためておくのも胃の大切な役割です。
消化について
胃の消化は、ぜんどう運動と胃液によって行われます。胃の中に食べ物が入ると、噴門から幽門に向かってうねるような収縮(ぜんどう運動)がくりかえし起こります。これによって食べ物は、胃酸や消化酵素を含んだ胃液と混ざり合いながら、すりつぶされていきます。どろどろの粥状になれば消化が完了です。
消化にかかる時間は3時間程度ですが、食べ物によって変わります。ごはんやパン、芋類などでんぷん性のものは比較的短時間で、肉や天ぷらなどの脂肪が多いものは消化に4〜5時間程度かかります。
ほかにも胃は、食べ物と一緒に入り込んだ細菌を胃酸で殺菌したり、身体に悪影響な物質を吐き出したり(おう吐)、飲食物の温度を調節したりするなどのはたらきも持ち合わせています。
ちなみに、食後や食間に感じやすい胃が重くなるような不快感を「胃もたれ」といいます。これは、食べ物が長時間胃の中にとどまることで起こり、食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎ、脂っこい食事などで胃に負担がかかっているサインです。
胃酸で胃が傷つかないのはなぜ?
胃粘膜には、胃液の分泌だけでなく、胃液から胃を守る「胃粘液」の分泌という重要な役割があります。
胃液には、金属を溶かすほどの胃酸やたんぱく質の消化酵素「ペプシン」が含まれているにもかかわらず、胃そのものが胃液によって消化されることはありません。それは、胃粘液が胃の内側全体をヴェールのように覆うことで、胃液から胃を守っているからなのです。