がんの確定診断後、実際に治療を開始するまでには、一般的には半月〜1カ月ほどの期間を要します。この間は、治療開始の事前準備や、治療開始後の生活の変化に対応した調整に充てる期間です。この準備や調整の中でもとても大切なことの1つに、ご家族との相談・調整があります。治療を開始するにあたって家族と何を共有すべきか、悩んだ時にはどうしたらよいかを考えるための、ヒントを見ていきましょう。
治療開始前は、無理のない範囲でライフスタイルの維持を
がんの治療を始めるまでの期間は、検査通院を除き、日常生活そのものに大きな変化はありません。ただ、がんにより気持ちが落ち込んでいる期間かと思います。自身の気持ちを第一に考え、無理のない範囲でライフスタイルを維持するのがよいでしょう。
不安な点は主治医やがん相談支援センターに相談
気持ちが落ち着いている状態だと感じられたら、自身の治療に必要な情報を整理してみましょう。具体的には、がんの進行度や治療の内容、治療期間が挙げられます。また、医療費や治療後に想定される変化なども考えてみます。
こうした中で気づいた不明な点は、遠慮せずに主治医や看護師、がん相談支援センターなどに質問・相談し、疑問点を解消して治療に臨めるようにしましょう。
家族に思いを伝えることが治療の原動力にも
自身で考えたり、がん相談支援センターに相談したりした内容は、メモに書き出しましょう。メモに書き出して整理することで、不安を覚える理由や、どのように対処すべきか明らかになるケースもあります。
ここまでの整理により、ご家族と事前に調整が必要な部分は明確になるでしょう。整理した内容はご家族に伝え、頼めることがあれば協力を求めましょう。
家庭内の役割分担、具体的な対応方法まで確認を
家事や育児の具体的な進め方を話し合い、治療に専念する間はご家族で分担できるか確認しましょう。ご家族だけで分担が難しい場合は、親族や公的なサービスなどの活用を検討しましょう。
家事は家族以外の頼れる方や外部サービスの活用も
治療中に自宅に残るご家族以外に、家事を手伝ってもらう方法も検討してみましょう。その際、協力してもらえる方にどこまで伝えるか、ご家庭内で確認しましょう。
また、頼れる方が近くにいなかったり、気を使われることが逆に心的負担になったりする場合は、シルバー人材センターやファミリー・サポート・センターなど、市区町村が提供する公的サービスを活用したり、家事代行などの有料サービスを活用したりするのも一つの手です。ただし、有料サービスを活用する場合は経済的な負担もあります。ご家庭の状況に合わせて、無理のない選択を心がけましょう。
育児は学校側との調整も
お子さんの連絡帳の受け渡しのような、定期的な学校とのやり取りなどを、自身が担当している場合、役割を変えてもらったり分担してもらったりする必要があります。また自身の意思で病状などを学校側に理解してもらい、引き続き対応を続けるという方法もあります。
また、小さなお子さんがいるご家庭の場合は、周囲の力を借りる場面が多くなるかもしれません。親兄弟や義理の家族を頼ったり、保育園の延長保育やベビーシッターなど、外部サービスを活用したりする方法を検討してみましょう。
入院に向け、無理のない範囲で持ち物を揃える
入院時に持参するものは、病院側が事前にリストを用意していることもあります。また『がん情報サービス』や患者団体のホームページなどにも、入院時に必要なもの、便利なものなどを記載していることがあります。情報収集しながら、自身やご家族と準備を進めましょう。
入院前から体調が思わしくない方は、無理をせず、ご家族に準備をお願いするのがよいでしょう。また、医療機関内には売店にて購入できるものもあります。事前に確認しておきましょう。
誰もが初めての経験、遠慮をせずに相談を
がんの治療に臨むことは、多くの方にとって全く初めての経験であり、不安を覚えることに無理はありません。全て一人で抱え込むのは、とても難しいことです。ご家族をはじめ、力になりたいと思っている方には、遠慮をせずに、不安を伝えたり相談したりしながら準備を進めていきましょう。