自身のがんにより、業務に影響を与えることを申し訳なく感じる方は少なくありません。就労中でも安心して治療に取り組み、また気持ちよく働くために、どんなことを意識するとよいでしょうか。職場とどのような情報を共有すべきか、誰に相談できるかを考えてみましょう。
病気になった時は『お互い様』の気持ちで
がんになったことで「職場に迷惑をかけるのでは?」「同僚たちに申し訳ない」と考える方も多いのではないでしょうか。しかし、病気になった時は『お互い様』です。2人に1人ががんになる時代、誰もががんになる可能性があります。
職場にまったく迷惑をかけずに治療を終えることを目指すより、今後、職場の同僚ががんなどの病気になったら「自分が受けたサポートを返そう」と考えてみましょう。
職場に正しい情報を伝えるためにすべきこと
治療による仕事への影響は最小限にとどめたいところです。そのためには、自身が病状や治療を理解し、職場をはじめとする関係者に正しい情報を伝えることです。
職場の方々に伝えてもよいと思えたら、『何を』『誰に』伝えれば、職場側や自身も、気兼ねなく治療と仕事を進められるかを考えてみましょう。
正しい情報をもとに休職や業務転換の要望を
がんでは診断から『5年生存率』が治療成績の目安になっています。5年生存率とは『診断から5年経過後に生存している人の割合』のことで、早期の胃がん(ステージI)の5年生存率は、98.7%です(2021年12月現在、全がん協加盟施設の生存率共同調査より)。
このような、がんやその治療に関する正しい情報を自身が理解し、休職や業務転換の必要性を職場の方々に正しく伝えられれば、職場側も休職制度の活用や配置転換といったサポートを検討してくれるのではないでしょうか。
他部署の同僚や取引先に伝えるべきか
仕事の内容によっては、同じ部署や他部署の同僚、時には外部取引先に伝えるかどうかを悩むケースもあるでしょう。そのようなときも、自身が伝えたいと思う方には伝えましょう。
取引先やパートナー企業など、外部の方には伝えにくいと感じるかもしれませんが、相手側にも同じような状況を経験した方がいる可能性もあります。自身の状況をより理解し、助けになってくれるかもしれません。
職場側が気になる、胃がんによる入院期間や通院回数
職場側は、がんの治療を進めるうえで必要となる休暇期間を確認するでしょう。では、胃がん治療の入院期間や通院回数を見ていきましょう。
開腹手術でも2週間ほどの入院期間、通院の薬物治療は週1回〜3週間に1回
胃がんによる入院期間は、最も早期の内視鏡治療で、長くて1週間程度、腹腔鏡手術・開腹手術で2週間前後です。術後の通院頻度も当初は月1回ほどですが、問題がなければ徐々に間隔は長くなります。
また、術後は再発や転移の有無を調べるために定期的な検査も必要となり、薬物治療を行うこともあります。術後の定期検診は治療の内容や経過によって異なり、通院で薬物治療を行う場合、使用するお薬や治療方針によって3週間に1回や週1回ほど、点滴のための通院が必要となります。
追加の休暇取得も考慮しつつ、事前の情報共有を
このように、胃がんの手術・治療のために必要となる入院期間は基本的には2週間ほど、通院は頻度が高い場合で週1回と、他のがんと比べても多くの日数を要するということはないでしょう。そのため、有給休暇や職場の病気休暇制度の範囲で、治療を進められるケースも多いです。
ただ、手術の合併症やお薬の副作用による体調不良で、休暇の追加取得が必要な場合もあります。その可能性もふまえ、どれほどの日数を休暇に充てるか、事前に主治医らに確認して職場に伝えることで、双方気兼ねなく治療と仕事にあたれるのではないでしょうか。
がん患者さんが職場にいるのは当たり前の時代に
がんは身近な存在のため、上司や同僚、職場の仲間、取引先の方が、今後同じようにがんに罹患する可能性もあります。初めての経験に双方戸惑うこともありますが、正しい情報を基に話し合い、不安な気持ちや問題を一つひとつ解消していきましょう。