がんの治療中は、心身ともに強く落ち込んだり、不安を覚えたりすることがあります。そして治療を支えるご家族もまた、自身のつらさを目の当たりにし、同様に不安を覚えています。自身とそのご家族が互いの気持ちを理解し、安心して治療に取り組むためのヒントを見ていきましょう。
診断直後だけでなく、治療中も感じる不安
近年、がん治療の進歩により、すべてのがんが『死の病』という状態ではなくなりつつあります。しかし、未だ多くの方にとって、がんという病のイメージは、やはり死を強く意識するものであり、がんと診断された方やそのご家族は、動揺することが多いかもしれません。この時、人は『衝撃の時期(何も考えられない)』⇒『不安・抑うつの時期(不安や孤独感にさいなまれる)』⇒『承認・適応の時期(現実の受け入れ)』という心の変化を、2週間ほどの間に経験するといわれています。
自身やご家族は『不安・抑うつの時期』に強い不安を感じます。しかし、診断時やその後の治療中、治療終了後も不安を感じることがあります。
がん患者さんの治療中の悩みや不安とは
治療が順調に進むか不安になることもあります。「いつも心配で頭から離れない」「集中できなかったりやる気がでない」など、ストレスになるかもしれません。
また、治療が成功しても、手術による後遺症やお薬による副作用の心配、その後の生活や再発による影響など、自身や周囲の方々に対する不安・心配もあるかと思います。
第二の患者とも呼ばれる家族の不安とは
治療中の生活に関しては、自身と同じくご家族もまた不安に思っています。さらに、「(あなたの)気持ちをどのように推し量ればよいかわからない」「自分が動揺しているところを見せて心配させたくない」など、経験のないがゆえの悩みや不安をご家族が感じている場合もあります。
このような背景から、近年、ご家族は『第二の患者』とも呼ばれており、がん医療の現場では、ご家族に対するサポートの重要性が認識されつつあります。
治療中の不安や悩みは誰に相談したらよいか
治療中の不安を共有・相談する先は、主治医を含めた医療従事者やがん相談支援センターの担当者、患者会の関係者、ご家族など、さまざまな選択肢があります。患者さんやご家族それぞれの立場において、自身が感じている不安がどのような理由に起因しているものなのかを明らかにして、不安や悩みの内容に合った相談先を見つけましょう。
『誰に話すべきか』はがん相談支援センターへ
誰に相談したらよいかわからないと感じた場合、まずはがん相談支援センターに連絡してみましょう。がん相談支援センターの相談員は、治療やその後の生活のことなど、がんに関する悩みならどんなことでも相談に乗ります。相談することで自身の気持ちが整理され、不安の原因や対処法が明らかになるかもしれません。
家族との共有が不安の解消につながることも
自身が不安に思う気持ちをご家族にも伝えてみてはいかがでしょうか。ご家族も同じように不安を覚えているかもしれません。ご家族が抱える不安の一部は、自身の気持ちや望みがわからないことによる場合があります。
入院中は、自身とご家族が互いの気持ちを共有する時間に限りがあり、考えや不安に思うことが異なるかもしれません。自身がもつ不安をご家族に打ち明け、ご家族に何をしてほしいか伝えることで、不安解消につながることが期待されます。
安心してがんの治療に取り組むために
自身とご家族がお互いのことを案じるがゆえに、すれ違いが起きてしまうことは、決して珍しいことではありません。それらを解消するために、がん相談支援センターなど第三者の力を借りましょう。
自身とご家族が、安心してがんの治療に取り組むことが何より大切です。不安な点や心配ごとを一つひとつ解消していきましょう。