がんの治療中には、抗がん剤の影響で脱毛や皮膚の炎症などが起こり、外見が変化することがあります。最近では副作用を軽減したお薬も登場していますが、がん治療と見た目の問題は、依然として患者さんを悩ませています。対処法と併せて見ていきましょう。
従来型の抗がん剤で起きやすい、さまざまな脱毛
脱毛は頭髪だけでなく、眉毛やまつ毛でも起こります。抗がん剤の種類によって差があり、従来から使われている抗がん剤の方が起こりやすい傾向があります。また、どの程度の脱毛となるかは個人差があります。
抗がん剤による治療の際、どのような副作用が現れやすいか、主治医や薬剤師または看護師から説明があります。その際、脱毛の副作用に関する情報の説明があるので、頭部の脱毛が気になる方は医療用ウィッグ(かつら)、バンダナ、帽子などを検討しておきましょう。これらは外見上の変化を補うという目的もありますが、髪の毛が少なくなることにより、頭皮での感染などが起こりやすくなることを防止する意味もあります。
医療用ウィッグの検討は事前の相談を
医療用ウィッグの使用を考えている場合、事前にサービス業者に相談するとよいでしょう。治療開始前のヘアスタイルや髪質、髪の色など、自身の理想により近づけたウィッグを選択できるようにするためです。
医療用ウィッグは、高いものでは数10万円するものもあります。そのため、購入前に材質、試着による装着感、その後の脱毛期や発毛期の装着感に合わせた、サイズ調整などのアフターケアの有無なども、十分に確認しておきましょう。
最近では、医療用補正具購入費の助成の1つとして、医療用ウィッグの購入費用の一部を負担してくれる自治体も増えてきています。購入を検討する際は、あらかじめお住まいの市区町村に、こうした制度があるかどうかも確認するとよいでしょう。
眉毛の脱毛には状況に応じた対処法が
眉毛やまつ毛の脱毛は、通常は化粧でカバーします。眉毛は脱毛の状況に応じて芯の軟らかいアイブロウペンシルやアイブロウパウダーを使い分けるか、両方を併用しましょう。脱毛の症状がひどい場合は、両方を併用した方が眉の形を整えやすくなります。アイブロウパウダーは、医療用ウィッグを装着時の地肌とウィッグの境界線に使うことで、この部分を目立たなくするといった使い方もできます。
男性は、初めての経験ゆえに戸惑うこともあるかもしれません。家族に女性がいる場合は、手ほどきをしてもらいましょう。女性が眉毛を書く際に使っている、眉毛テンプレートとよばれる道具を使うのもよいでしょう。
また、まつ毛は、アイライナーで目元を強調することで、外見上の違和感が少なくなります。
さらに脱毛の状況によって、つけ眉毛やつけまつ毛を利用する方法もあります。中には頻繁な着脱不要なタイプも販売されています。自身の状態にあった方法を選びましょう。
爪の症状には、マニキュアやジェルネイルで保護を
抗がん剤治療では、爪の表面のかさつきや薄く欠けやすくなる、凹凸が激しくなるなどの症状が出ることもあります。場合によっては、指先で少々激しい作業をすると、爪が欠けることもあります。
その際、マニキュアやジェルネイルを爪に塗って、保護対策をしましょう。ただ、抗がん剤治療中は肌が敏感になるケースもあるため注意してください。マニキュアを取る際のリムーバー(除光液)の使用で皮膚がかぶれたり、かゆみが現れたりすることもあります。
治療中は、あらかじめ、リムーバー不要のマニキュアやジェルネイルを選ぶことが望ましいです。ジェルネイルには、リムーバーが要らないピールオフというタイプもあるので、検討してみてはいかがでしょうか。
肌の症状には、自分に合ったスキンケア用品の使用を
肌の荒れは、分子標的薬と呼ばれる、がん細胞の生存に必須の分子(タンパク質)の働きを抑える治療薬を使う時に出やすい副作用です。
顔の場合、入浴後に化粧水や乳液、これらが1つとなったオールインワンタイプの化粧品、ワセリンなど、自分の肌に合うものでスキンケアを心がけましょう。特に、爪の根元の皮膚が荒れることも少なくないので、ハンドクリームを爪の根元にも塗って対策しましょう。
敏感肌で化粧品を使うことに慣れていない方は、あらかじめ二の腕などに軽く塗って半日置くパッチテストで、皮膚に合うかを試すのもよいでしょう。
肌のくすみや色素沈着、変色は、抗がん剤の使用により、皮膚の細胞分裂や増殖が障害されたり、メラニンを生み出す細胞が活発になったりすることで起こりやすい副作用です。男女とも、その部分にフェイスパウダーやコンシーラーなどを薄く伸ばすだけでも目立たなくなります。女性はさらにチーク(頬紅)を使って、より明るい印象にするのもよいですね。
アピアランス専門のセンターや男性患者さん向け冊子も活用
一部の医療機関では、外見(アピアランス)のケアの相談に乗ってくれる専門部門を『アピアランスケアセンター』や『アピアランス支援センター』の名称で設置しています。通院中の医療機関や近隣の施設にそのような部署がないか、確認してみましょう。
また、男性は「男が化粧なんて」と思うかもしれませんが、最近では男性向け化粧方法をまとめた冊子も配布されていますので、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。