がん患者さんやそのご家族が、他人の治療・療養方法を知り、悩みや不安を和らげるために有用な手段のひとつに、患者会などのコミュニティへの参加があります。近年では、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用も盛んになり、組織を介さない、患者さん同士による直接的な関わり合いも増えてきています。そこで、近年の患者コミュニティの種類やその形態、参加する際のポイントなどを見ていきましょう。
さまざまな形態がある近年のがんコミュニティ
多くの方が、がんと診断されると今後の療養に対してさまざまな不安を抱くのではないでしょうか。その際、自身と同じく、がんを発症した方などの話を聞いて、参考にしたいと思う方もいることでしょう。
その場合の選択肢としては、次の方法が考えられます。
1)『がんサロン』の利用
2)患者会への参加
3)インターネット上で発信する患者個人と接触する
がん診療連携拠点病院を中心に整備が進む『がんサロン』
『がんサロン』という言葉をご存じでしょうか。がんサロンは、患者さんやそのご家族などが集まり、交流や情報交換をする場です。「患者会とどう違うの?」と思う方もいるでしょう。がんサロンは、質の高いがん医療を提供できるよう、国が定めた要件を満たした『がん診療連携拠点病院』を中心に整備が進んでおり、また病院内に設置された『がん相談支援センター』が運営をサポートしていることもあります。
そのほか、地方自治体や日本対がん協会の提携団体などが運営しているものもあります。がんサロンの有無については、各医療機関のがん相談支援センターや医療連携室にて、情報を入手することが可能です。
さまざまな規模・運営形態がある患者会
患者会は、患者さんや元患者さんが中心になって運営されている団体です。団体の規模はさまざまで、がん種毎に全国規模のものもあれば、地域単位の患者会もあります。また、組織形態も任意団体、民間非営利団体(NPO)法人、一般社団法人などがあります。これらはインターネット上で検索して探すことができます。
さまざまながん患者会が加盟する『全がん連』
また、さまざまながん患者会が加盟する、全国組織の全国がん患者団体連合会(全がん連)もあります。全がん連は、全国のがん患者団体の連合組織として、がん患者さんやその家族の治療やケア、生活における課題の解決に取り組んでいる団体です。
同連合会のホームページには、加盟する各種がんの患者団体の一覧と、ホームページのリンクもありますので、そこから、自身やご家族がかかっているがんの患者団体を知ることも可能です。
全がん連に加盟していない団体は、怪しい組織とは限らない
患者会の信用度は、全がん連の加盟で決まるものではありません。患者会は、患者自身が自主的に行っている組織のため、各組織の活動範囲や方針、財政状況などに違いがあります。そのため、全がん連に加盟していないからといって、決して怪しい組織というわけではありません。
患者会では患者さん同士での相談も
患者会では、患者さん向けの医療相談が行われていることもあります。同じようにがんを経験した方が対応するため、医師などの医療従事者への相談より、ハードルが低く感じるのではないでしょうか。これからの治療の不安などを抱えている場合に、利用してみるとよいでしょう。
ただ、患者会を運営している患者さんの多くは、日常生活の仕事や家事の傍らで、ボランティアとして会の運営に携わっています。そのため、時間などに限りはあるため、回数や時間のマナーは守りましょう。
患者さんのブログやSNSから直接コンタクトを取れる場合
現在では、がん治療を終えた元患者さんや治療中の患者さんが、ブログやSNS上で情報発信をしていることも増え、直接コンタクトを取ることが可能な場合もあります。礼儀をわきまえ、マナーを守って、コンタクトを取るよう心がけましょう。
求める情報と得られる情報が一致しないケースも念頭に
がんサロンや患者会も当てはまりますが、こういった組織やコミュニティにはデータが多く集まっています。そのため、同様の経験をした患者さんに会える可能性が期待できます。
しかし、ネット上で発信している患者さんとの個人間のやり取りは、注意すべきことがあります。それは、がんの種類や症状、進行度、治療はさまざまであり、個人の経験が必ずしも自身と一致しない場合もあるという点です。
主治医ら医療従事者に情報の確認を
がんコミュニティ内で、患者さん同士で交換する情報や相談内容は、あくまでも患者さんの経験談です。必要な情報を入手する際や判断できない場合は、主治医ら医療従事者にも相談するとよいでしょう。