インターネットとネット上のメディアの発展により、近年では、がんに関するさまざまな情報を、ウェブサイト上から得られるようになってきました。その一方、効果が認められていない治療法など、不確かな情報を掲載し、収益を得ているウェブサイトも存在しており、得られる情報のすべてが正しいものとは言い難い状況にあります。そんなインターネット上で、がん情報を探す際のコツや注意点をご紹介します。
便利なキーワード検索でもネット上の情報は見極めが必要
自身やご家族ががんと診断された時や、がんの疑いがあるため精密検査を行い、その結果を待っている期間などに、多くの方がインターネット検索で、そのがんに関連する情報を収集することでしょう。
例えば、胃がんにかかった方が、検索エンジンで『胃がん』または『胃癌』というキーワードで検索すれば、ヒットしたウェブサイトが表示され、多くの場合は、患者さんやご家族が求める情報に問題なくアクセスできます。
ただし、インターネット上には有益な情報と、そうでない情報が存在します。また、検索結果に表示されたウェブサイトのすべてが、正しい医療情報を掲載しているとは限らないので気をつけましょう。
誰が運営するウェブサイトなのか
インターネット上で見つけた情報が信頼できるか、それを判断する方法の1つが、ウェブサイトの『運営者情報』を確認することです。ウェブサイトの上部や下部には、多くの場合『運営者』や『このサイトについて』という表記があります。このような記載がない、もしくは運営者が定かでないウェブサイトの場合は、注意が必要です。
ウェブサイトの運営者が医療機関や製薬関連企業であった場合、ある程度、信頼を置けると考えられます。ただし、そのすべてが信頼できるウェブサイトとは限らないので注意しましょう。医療機関や製薬関連企業のウェブサイトでも、一部では、効果が立証されていない治療を紹介していたり、情報が古いままになっていたりすることがあります。
複数のウェブサイトを比較する
では、掲載された情報が正しいものか否か、どのように判断したらよいのでしょうか。その1つに、複数のウェブサイトを見比べて、同一の内容が記されているかどうかを確かめる方法があります。
大病院やクリニック、有名な製薬企業など、運営者の業態や規模感が異なる複数のウェブサイトを閲覧し、多くのウェブサイトで同じ情報が見受けられる場合、それは正しい可能性が高い情報であると考えられます。
出典を確認する
多くの場合、正しい情報を掲載するウェブサイトのページには、その情報の出典元が記されています。ページの下部や図表の下などに、論文のタイトルや掲載先へのURLが記されているのを見たことがあるかもしれません。これが、信頼できる情報かどうかの、1つの判断基準となります。
ただし、あたかも根拠となる論文へのリンクのように見せて、実は、全く関係ないものへのリンクの場合や、論文を曲解した情報を掲載している場合もあるため、注意が必要です。
こちらも、先述の『複数のウェブサイトを比較する』という方法で、信頼できる情報なのか否かを、ある程度確かめることはできます。
『広告』や『AD』が出てきたら
インターネットの検索エンジンは、より適切な情報が上位に表示されるよう、アップデートが進められてきました。その結果、現在では上位にがん情報サービスなど、信頼性の高い関連サイトが表示されるようになりつつあります。
一方で、検索結果ページの上部や下部に『広告』や『AD』と記されたウェブサイトが表示されることがあります。こうしたサイトを閲覧する際には注意が必要です。科学的に効果が証明されていない治療法や健康食品の宣伝である可能性があります。
もちろん、中には信頼できる情報源による広告が表示されることもあります。しかし、『広告』や『AD』と表示されたサイトを閲覧する際には、上記のような不確かな情報が掲載されたウェブサイトである可能性を念頭に置き、アクセスするようにしましょう。
より絞り込んだ情報が得られる『AND検索』
検索の際、『胃がん』のキーワードの後にスペースを入れて他のキーワードを追加すれば、2つのキーワードがともに含まれる『AND検索』ができます。『胃がん 検査』と入力することで、胃がんを診断する際の検査に関連する情報ページが表示されます。
ただし、AND検索を行う際に、『治る』や『治癒』というキーワードは注意しましょう。このようなキーワードは、医療において根拠のないサイトが現れやすくなります。運営元の確認や自身で判断できない場合は、主治医に相談しましょう。
書籍でもインターネットでも『治った』『消えた』は要注意
書店や通信販売サイトで、特定の食品などを挙げて『〇〇でがんが治った』『〇〇でがんが消えた』というタイトルの書籍を見かけることもあるでしょう。インターネット上でも、その類のサイトは少なからず存在します。インターネット上に限った話ではありませんが、こうした情報を目にしたときは一度立ち止まり、内容をよく確認することが大切です。
気になる情報を見つけた時は、主治医に相談を
インターネットで見つけた気になった情報がある場合は、遠慮せずに主治医に質問してみましょう。そこで主治医が「よくわからない」「そのようなエビデンスは聞いたことがない」と答えた時は、その情報は真偽が不明、もしくは正しくない情報であると考えるのがよいでしょう。
主治医も、患者さんが不安にさいなまれた結果、インターネット上の不確かな情報に振り回されることを望んではいません。インターネット上で気になった情報を見つけた時は、遠慮なく主治医に相談しましょう。